
「田舎のトイレをきれいに」から、世界の水課題へ——ダイキアクシスが挑む、ビジネスで解く社会課題【株式会社ダイキアクシス】
update: 2026.10.4
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「田舎のトイレをきれいに」から、世界の水課題へ――ダイキアクシスが挑む、ビジネスで解く社会課題【株式会社ダイキアクシス】
株式会社ダイキアクシス 代表取締役社長 大亀裕貴さんインタビュー
はじめに
安全な飲み水を使えない人は、世界に約22億人。4人に1人にあたります。この数字に、排水処理という技術で向き合ってきた会社が愛媛にあります。
創業68年の株式会社ダイキアクシスです。「環境を守る。未来を変える。」を理念に、国内の水環境を支えながら、アジアの新興国へフィールドを広げてきました。トイレの環境をきれいにしたいという創業の願いは、どうやって世界の水課題に挑む事業へ育ったのか。創業3代目の大亀裕貴社長に聞きました。
「環境を守る。未来を変える。」――三つの事業で水と暮らしを支える
――まず、ダイキアクシスがどんな会社か、教えてください。
大亀社長:「環境を守る。未来を変える。」を理念に、創業から68年になります。事業の柱は大きく三つ。排水処理を担う水処理メーカーの事業、住宅設備の卸事業、そして再生可能エネルギーの事業です。
もともとの創業は「田舎のトイレ環境をきれいにしたい」という思いから始まりました。その原点を軸に、地球環境を守ることを事業として追い続けてきた会社です。
世界で22億人が、安全な水を持たない――水をめぐる社会課題
――御社が捉えている「水」の社会課題とは、どのようなものでしょうか。
大亀社長:国内では、生活排水の処理が大きな論点です。下水道の普及率は82%ほどですが、下水インフラは維持管理に多額の資金がかかり、このままでは自治体が適切な維持管理を続けられなくなる恐れがあります。
浄化槽にも課題があります。かつてはトイレの排水しか処理できない「単独処理浄化槽」しかなく、後に台所などの排水も処理できる「合併処理浄化槽」が開発されました。ところが、今も国内で使われている浄化槽の約半分は、いまだトイレの水しか処理できない単独処理のまま。新設は合併処理が義務ですが、既設を切り替える強制力はなく、自治体の補助頼みで移行が進んでいないのです。
そして世界に目を向けると、課題はさらに深刻です。数字でお話しすると、安全な飲み水を使えない人は約22億人、実に4人に1人にのぼります。トイレなどの衛生施設を使えない人も、約35億人いる。不衛生な水や衛生環境が原因で年間およそ140万人が命を落としていて、そのうち約40万人は5歳以下の子どもたちです。1日あたりに直せば、およそ1,000人もの幼い子どもが、防げるはずの病気で亡くなっている計算になります。
――水の問題は、命だけでなく教育やジェンダーにも及ぶと聞きます。
大亀社長:その通りです。遠くの井戸や川まで何時間もかけて水を汲む。その役割が主に子どもに課されるため、学校に通う時間が奪われ、教育の機会が失われています。安全なトイレがないために屋外で排泄せざるを得ない人は、世界に約4億人。とくに女性や女の子は、人目を避けて夜や早朝の暗い時間に出かけるため、性暴力や犯罪のリスクと常に隣り合わせです。水の問題は、人の尊厳にまで関わっているんです。
原点は、ザンビアで見た「笑顔」――なぜ、この道を選んだのか
――社長ご自身が、水や途上国の課題に向き合う原点は、どこにあったのでしょうか。
大亀社長:高校2年生のとき、学校のプログラムでアフリカ・ザンビアにボランティアで2週間ほど滞在したことが原体験です。土でできた家に暮らし、遠くの井戸まで水を汲みに行く。そんな現実を初めて目の当たりにして、強い衝撃を受けました。
ただ、不思議なこともありました。生活環境は決して豊かではないのに、現地の人々がいつも笑顔で、楽しそうに暮らしていた。そのことにも驚いて、「豊かさとは何だろう」と疑問が湧いたんです。この経験が、途上国の開発に携わりたいという思いの出発点になりました。大学でもケニアや東南アジアを訪ねて、現実を自分の目で見てきました。
技術とアイデアで解く――浄化槽の強みを、世界へ
――そうした課題に、ダイキアクシスはどう向き合っているのですか。
大亀社長:中核となる環境機器事業では、生活排水と産業排水の処理を、開発・製造から施工、保守・維持管理まで一貫して手がけていて、現場で得た知見を次の新技術に生かしています。住宅機器事業は、住宅設備の卸売や外壁工事を通じて暮らしの環境を整える事業です。再生可能エネルギー事業では、太陽光・風力の売電に加えて、地域で集めた使用済みの天ぷら油からバイオディーゼル燃料をつくる、地産地消型の取り組みを進めています。
なかでも私たちの強みは、水処理技術、とりわけ浄化槽です。浄化槽は、人口が集まっていない地方でこそ力を発揮してきました。日本も高度経済成長期には水の汚れで多くの人が健康被害に苦しみましたが、政府が規制を設け、メーカーが技術を磨き、その掛け合わせで今の美しい水環境を築いてきた。その同じ歩みを、いま水環境が劣悪で、これから成長していく国々でも実現したい。現在はインド、インドネシア、シンガポール、スリランカ、バングラデシュ、中国の6カ国に展開しています。
――その先に、どんな社会を目指しているのでしょうか。
大亀社長:一言で言えば、人々が将来にわたって暮らし続けられる、持続可能な社会です。私たちは「世界の環境課題を技術とアイデアで解決し、世界の人々の生活を支える」というパーパスを掲げています。日本には、60年かけて水環境を立て直してきた歩みがある。それを必要としている国々で自分たちの強みを発揮していくことが、次の挑戦だと思っています。
単なるCSRとの違い――「国づくり」から関わるという覚悟
――社会課題の解決と、企業としての収益。その両立は、どう図っているのでしょうか。
大亀社長:展開している国々は水環境が劣悪で、需要も危機感も高い。ただ、これから発展する国ほど、環境インフラにかけられるコストはまだ十分ではありません。そこが最大の難しさです。海外は先行投資の側面が大きく、国内事業がしっかり稼いでいるからこそ挑戦できている、というのが正直なところです。
もう一つの鍵は、人材です。私たちの仕事は、製品を売って終わりではありません。日本がそうだったように、まず政府に規制をつくってもらい、水インフラが整う土壌そのものを耕す。いわば「国づくり」の一端を担う仕事です。現地政府の要人にアプローチし、日本の経験を伝え、「一緒にこういう社会をつくりましょう」と説いていく。公衆衛生という概念がまだ根づかない国もあるので、子ども向けの教育CSRなどを通じて、まず関心を持ってもらうところから始めることもあります。利益を取りながら事業として成功させる、そのバランス感覚は、正直いちばん難しいところですね。
――老舗の浄化槽メーカーとして、国内に徹する道もあったはずです。なぜ、あえて海外や社会課題に挑むのでしょうか。
大亀社長:私たちの行動指針の一つに「開拓者精神」があります。人より一歩でも前を歩もう、と。国内に浄化槽メーカーは十数社ありますが、自己資本で本格的に海外展開しているのは、当社ともう一社だけです。今も苦しんでいる人々を、自分たちの技術とアイデアで救いたい。その思いが理念の中心にあるからこそ、日本だけでなく世界を見て成長していく。単なるCSRとの違いは、そこにあると思っています。
縁の下の力持ちとして――求めるのは「自ら軸になる」人
――入社後はどんなキャリアを歩み、どんな人を求めているのでしょうか。
大亀社長:基本は、まず国内で3~5年、配属された事業部で経験を積んでもらいます。一人前になり、知識と経験を蓄えたうえで、海外に関心があり、ポストがあれば海外事業にも挑戦できる。どの事業に携わるかは、面接で希望を聞きながら決めていきます。
私たちの仕事は、建設・建築設備というインフラです。人目につかないところで暮らしを支える、地道な「縁の下の力持ち」。派手ではありません。だからこそ、理念に共感してくれる人に来てほしいと思っています。
当社には「スッテモムイデモ」という行動指針があります。愛媛の方言で、何が何でも最後までやり遂げる、という意味です。あわせて「PROTECT×CHANGE(守るべきものは守り、変えるべきものは変える)」という企業精神も掲げています。現状維持は衰退。変化を前向きに楽しんで、周囲を巻き込みながら自分で考えて動ける人。歯車ではなく、自らが会社の軸になろうとする人と、一緒に働きたいですね。
就活生へのメッセージ――「自分の選択を、正解に育てる」
――社会課題の解決に関心のある学生へ、メッセージをお願いします。
大亀社長:思いを、経済の仕組みに乗せてこそ社会は変えられると思っています。本当に、正解のない時代になりました。だからこそ、自分の選択を、正解に育てていく覚悟を持って、最初の一歩を踏み出してもらえたらと思います。
社会課題を解決したいという志を持つ皆さんには、心から敬意を表します。そのピュアな情熱が、未来をつくる原動力になると思います。私自身も、世界の環境を、ひいては日本を良くしていきたいという思いで日々経営をしています。ぜひ、一緒に成長していきましょう。
おわりに
取材を通して印象に残ったのは、壮大なビジョンよりも「スッテモムイデモ」という愛媛の方言でした。何が何でも、最後までやり遂げる。世界の水課題に挑む事業は、そんな泥臭い言葉に支えられていました。
表舞台に出る仕事ではなくとも、社会の根幹をしっかりと支えていく。ダイキアクシスの仕事には、「国づくり」の最前線から関わっていく圧倒的なスケールの大きさがあります。社会課題の解決を本気で仕事にしたいなら、あなたも一歩を踏み出してみませんか。
update: 2026.10.4




