
ジェンダーレスとは?意味や具体例、日本の現状とSDGsとの関連まで徹底解説
update: 2025.2.3
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ジェンダーレスとは?意味や具体例、日本の現状とSDGsとの関連まで徹底解説
そもそも「ジェンダー」とは何か
「ジェンダー」とは、社会的・文化的に作られた性別の違いを指す言葉です。生物学的な「性別」とは異なり、「男らしさ」や「女らしさ」という固定観念や役割分担が含まれます。例えば、「男性は外で働く」「女性は家事をする」といった価値観がジェンダーによるものです
ジェンダーの概念は、歴史や文化によって異なります。日本では古くから性別に基づいた役割分担が根付いており、現代でもその影響は残っています。一方で、現代の社会では個人の多様性を尊重し、ジェンダーにとらわれない生き方が重要視されるようになりました。
ジェンダー問題が浮き彫りになった背景には、教育や職場での不平等、メディアのステレオタイプ的な表現が挙げられます。これらはジェンダーバイアスと呼ばれ、無意識のうちに人々の思考や行動に影響を与えます。
近年、ジェンダーに関する問題は世界的にも重要なテーマとなっており、「ジェンダー平等」は持続可能な社会を築くための必須条件とされています。ジェンダーへの正しい理解は、偏見を取り除き、性別に関係なくすべての人が自由に生きられる社会の実現につながります。
ジェンダーレスの定義と意味
「ジェンダーレス」とは、性別による固定観念や区別を取り払おうとする考え方やライフスタイルを指します。生物学的な性別(男性・女性)ではなく、社会的・文化的な性役割や価値観に縛られないことを目指します。
ジェンダーレスの考え方は、特にファッションや教育、職場環境の変化に顕著に表れています。ファッション業界では、性別に関係なく着られる「ジェンダーレスファッション」が注目を集め、子ども服や制服でも性別にとらわれないデザインが増えています。職場でも、性別による役職や賃金の格差をなくし、平等な機会を提供する動きが進んでいます。
つまり、ジェンダーレスは単なる「見た目の中性化」ではなく、個人が性別に関係なく自分らしく生きられる社会を目指す思想です。

ジェンダーレスとジェンダーフリーなど関連用語の違い
ジェンダーに関連する用語は、似ているようで異なる意味を持つものが多くあります。それぞれの違いについてまとめます。
- ジェンダーレス
- 性別による区別や固定観念をなくし、性別自体を意識しない状態を目指す。
- 例:性別を問わないファッションや、男女共通の制服デザイン。
- 性別の枠組みを超えた自由な自己表現を強調する考え方。
- ジェンダーフリー
- 性別にとらわれず自由に選択・行動できる状態を目指す。
- 例:教育現場で「男子は体育、女子は家庭科」といった性別に基づく区別を廃止する取り組み。
- 性別による「役割」や「制限」をなくし、すべての人に同じ選択肢を与えることが目的。
- ユニセックス
- 男女共用のデザインや商品を指す言葉。
- 例:男女共通の衣服や香水など、性別に関係なく使用できるもの。
- 「性別を超える」というよりも、「共通するものを作る」というニュアンスが強い。
- ノンバイナリー
- 「男性」「女性」という二元的な性別に当てはまらない、またはその間を行き来する性自認を指す。
- 例:自分の性別を「どちらでもない」と感じる人々のアイデンティティ。
このように、ジェンダーレスは「性別の境界をなくす」ことを強調し、ジェンダーフリーは「自由な選択」を重視する概念です。ユニセックスやノンバイナリーも含め、それぞれの意味や目的を理解することで、ジェンダーに関する考え方を深めることができます。
ジェンダーレスの具体例
ジェンダーレスの考え方は、私たちの生活のさまざまな場面に取り入れられています。ここでは代表的な具体例を2つ紹介します。
ファッションとジェンダーレス
ファッション業界では、性別にとらわれないデザインやスタイルが注目されています。
- 「ジェンダーレスファッション」として、男性がスカートを着たり、女性がメンズライクな服を着ることが一般的になりつつあります。
- 大手ブランドでも、男女共用のデザインを展開し、色や形に性別の区別を設けない商品が増えています。
制服や学校教育とジェンダーレス
学校では、ジェンダーレスな制服が導入される例が増えています。
- スカート・ズボンを自由に選べる制服や、性別を問わないデザインの導入が進んでいます。
- また、教育現場でも「男らしさ」「女らしさ」を押し付けず、個人の自由な自己表現を尊重する動きが広がっています。

日本におけるジェンダーレスの現状とジェンダーギャップ指数
日本のジェンダーギャップ指数の現状
世界経済フォーラム(WEF)が毎年発表する「ジェンダーギャップ指数」は、経済、教育、健康、政治の4分野における男女間の平等を評価する指標です。2024年の報告によると、日本は146カ国中118位に位置しています。前年からはやや順位を上げたものの、主要先進国の中では依然として最下位に近い状況です。
日本のジェンダーギャップが広がっている大きな要因は、政治と経済分野の遅れです。
- 政治分野では、女性議員や閣僚の割合が極端に低く、政策決定の場に女性が十分に参画できていません。例えば、日本の国会における女性議員の割合はわずか10%台にとどまっています。
- 経済分野においても、女性管理職や役員の割合は低く、雇用機会や賃金における男女格差が依然として存在します。
一方で、教育と健康分野は比較的良好で、男女間の差はほとんど見られません。しかし、これは他国と比べて日本の強みではあるものの、総合評価を引き上げるには至っていません。
世界トップのアイスランドの取り組み
2024年のジェンダーギャップ指数で1位を獲得したのはアイスランドです。同国は15年連続でトップの座を維持しており、男女平等の先進国として高く評価されています。
アイスランドが高評価を得ている理由は、以下の通りです。
- 政治分野の女性リーダーの活躍:国会議員の約半数が女性であり、女性首相のリーダーシップも社会に根付いています。
- 経済分野の平等:企業役員や管理職における女性比率が高く、男女の賃金格差も少ない。
- 法制度の整備:男女平等を促進するための法律や社会保障制度が充実しており、育児休業や労働条件でも平等が確保されています。
これらの取り組みにより、アイスランドでは女性も男性も性別に関係なく、社会や経済で活躍できる環境が整っています。
最下位の国:スーダンの現状
一方で、ジェンダーギャップ指数最下位に位置するスーダンは、男女間の格差が深刻な状態です。
- 教育機会の不平等:女性は教育を受ける機会が制限されており、識字率にも大きな差があります。
- 経済活動への制約:多くの女性が経済活動から排除され、社会的・経済的に弱い立場に置かれています。
- 社会的慣習や制度:伝統的な価値観が根強く、女性の権利や地位向上が進んでいません。
このような背景により、スーダンでは女性が社会的に活躍する機会が限られており、ジェンダー平等の実現は依然として遠い状況です。
日本に求められる課題と取り組み
日本のジェンダーギャップ指数の改善には、特に政治と経済分野での女性参画を推進することが不可欠です。
- 政治分野:女性候補者を支援する制度の拡充や、議会における女性比率の向上。
- 経済分野:女性管理職の積極的登用、賃金格差の是正、育児や介護と両立できる職場環境の整備。
アイスランドの事例が示すように、法制度の充実と社会の意識改革が進めば、日本も男女平等を実現する道筋を描くことができるでしょう。
ジェンダーギャップ指数
https://www3.weforum.org/docs/WEF_GGGR_2024.pdf
ジェンダーレスとSDGsの関連性

ジェンダーレスは、持続可能な社会の実現を目指すSDGs(持続可能な開発目標)において、特に目標5「ジェンダー平等を実現しよう」と深く関連しています。ジェンダーレスの考え方は、性別に関係なくすべての人が平等な機会と権利を持ち、自分らしく生きられる社会を築くという、目標5の実現に欠かせない要素です。
SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」とは
SDGsの目標5は、「あらゆる形態のジェンダーに基づく差別や不平等をなくし、女性や女児が平等に社会に参画できるようにする」ことを掲げています。この目標には、以下の具体的なターゲットが含まれています。
- 女性への差別や暴力の撤廃:社会的、文化的に根付いた偏見や暴力をなくす。
- 教育機会の平等化:すべての人が性別に関係なく平等に教育を受けられるようにする。
- 政治・経済活動への平等な参画:女性がリーダーシップの場に立ち、意思決定に関わる機会を増やす。
- 労働環境の改善:賃金格差を是正し、家事や育児の負担を公平に分担できる社会を目指す。
目標5は、ジェンダー平等を人権の問題として捉え、男女の区別なくすべての人が可能性を最大限に発揮できる社会の構築を目指しています。
日本企業によるジェンダーレス推進の取り組み
日本企業は、ジェンダーレス推進のために多様な取り組みを行っています。以下に、具体的な事例を3つ紹介します。
・楽天株式会社:ダイバーシティ推進
楽天は、年齢、性別、国籍を問わず、全従業員が最大限の能力を発揮できる環境整備に努めています。具体的な取り組みとして:
- 女性従業員のサポート:キャリアセッションの実施、産前・復職前セミナーの開催、育休中の従業員向けニュースレターの配信などを行い、ライフステージに応じた支援を提供しています。
- 社内託児所の設置:オフィス内に従業員専用の託児所「ゴールデンキッズ」を設け、仕事と育児の両立をサポートしています。
参考:https://corp.rakuten.co.jp/sustainability/diversity/
・積水ハウス株式会社:男性社員の育児休業推進
積水ハウスは、男性社員の育児休業取得を推進する「育休プロジェクト」を展開しています。具体的には:
- 特別育児休業制度:3歳未満の子を持つ全従業員を対象に、1ヶ月以上の育児休業を有給で取得できる制度を導入しています。
- 家族ミーティングシート:家族で育児や家事の分担を話し合うためのシートを提供し、男女問わず家庭での役割分担を促進しています。
参考:https://www.sekisuihouse.co.jp/ikukyu/project/
・パナソニック株式会社:女性リーダー育成
パナソニックは、ジェンダーギャップ解消のため、女性リーダーの育成に力を入れています。具体的な取り組みとして:
- 女性リーダー向けメンター制度:2021年度より、女性リーダーを対象にメンター制度を開始し、対話を通じて自発的な成長を支援しています。
- 女性リーダー異業種研修:2018年から、リーダーシップスキルを習得するための異業種研修を実施し、キャリア形成をサポートしています。
参考:https://connect.panasonic.com/jp-ja/about/sustainability/dei#dei-attempt
このように日本企業もジェンダーレス社会の実現に向け環境整備や意識改革に取り組んでいます。
ジェンダーレスが社会にもたらす影響

ジェンダーレスの推進は、性別による固定観念や差別をなくし、すべての人が自分らしく生きられる社会を実現します。性別に縛られないことで、個人の能力や意欲が尊重され、可能性を最大限に発揮できるようになります。
また、ジェンダーレスな環境は経済の活性化にもつながります。多様な人材が社会に参画することで、新しいアイデアやイノベーションが生まれ、労働力不足の解消にも寄与します。さらに、心理的な偏見やストレスが軽減され、すべての人が安心して生活できる多様性に富んだ社会が形成されるでしょう。
このような取り組みは、SDGs目標5「ジェンダー平等」の達成にもつながり、誰もが尊重される持続可能な社会の実現に寄与します。ジェンダーレスは、個人の自由な選択を可能にし、社会全体の成長と平等を促す鍵となるのです。
ジェンダーレスを理解し推進するために私たちができること
ジェンダーレスの理解と推進は、一人ひとりの意識と行動から始まります。多様性を尊重し、誰もが自由に生きられる社会を築くために、まずは身近なところから取り組みを始めていきましょう。
ジェンダーについて学び、理解を深める
ジェンダーに関する知識を正しく理解し、「男らしさ」「女らしさ」といった固定観念がなぜ生まれるのかを考え、見直す。本や映画、ニュースを通じて情報に触れることで、無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)に気づくきっかけになります。
日常生活で固定観念にとらわれない選択をする
洋服や色、おもちゃなどを選ぶときに「男だから」「女だから」という意識をなくし、自由な選択を尊重する。家事や育児、仕事の役割分担も性別ではなく対等に行うことを意識する。
偏見や差別に気づき、声を上げる
周囲で性別に基づく偏見や差別的な言動を見たときは、勇気を持って違和感を示し、自分自身も偏見にとらわれていないかを振り返る。他者の意見や価値観を尊重し、オープンな対話を心がける。
ジェンダーレスな社会づくりを応援する
ジェンダーレストイレやジェンダーレス制服を導入している企業や学校をサポートし、理解を広める。SNSやイベントでジェンダーレスの必要性や取り組みを発信し、周囲に伝えていく。
自分の行動を変え、日々の意識をアップデートする
日常の中で当たり前だと思っていた価値観を見直し、他者を尊重する姿勢を大切にする。小さな行動の積み重ねが、ジェンダーレスな社会の実現へとつながります。
まとめ
ジェンダーレスを理解し推進するには、まずジェンダーに関する知識を学び、固定観念を見直すことが大切です。日常生活では、性別に縛られず自由な選択を尊重し、家事や仕事の役割分担なども平等に行うことを意識します。偏見や差別ではなくオープンな対話を心がけましょう。
update: 2025.2.3