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ファストファッションの問題点と持続可能な選択とは?

update: 2025.2.3

ファストファッションの問題点と持続可能な選択とは?

 

ファストファッションは、最新のトレンドを手軽に楽しめる便利なスタイルとして人気を集める一方で、その背後には環境汚染や劣悪な労働環境といった深刻な問題が隠れています。本記事では、ファストファッションの概要から、その歴史や社会問題、各国の取り組み、そして消費者として私たちにできることまでを詳しく解説します。持続可能な未来を目指すために、正しい知識を身に着け必要な行動をとれるようにしていきましょう。

 

ファストファッションの問題点と持続可能な選択とは?

 

ファストファッションとは?

ファストファッションとは、最新のトレンドを取り入れた衣服を短期間で大量生産し、低価格で消費者に提供するファッションのスタイルを指します。ファストファッションの特徴は「迅速な商品開発」「大量生産」「低価格設定」で、消費者が手軽にトレンドアイテムを購入できる点が魅力です。具体的には、デザインから販売までのサイクルが非常に短く、通常は数週間から1か月程度で商品が店頭に並びます。

この仕組みを可能にしているのは、サプライチェーン(原材料の調達から生産、加工、流通、そして販売により消費者に提供されるまでの一連のプロセス)の効率化と、生産コストの安い地域への依存です。多くのブランドはアジアや南米などの工場で製造を行い、物流を最適化することでコスト削減を実現しています。

ファストファッションは「誰でも気軽にトレンドを楽しめる」という点で消費者に支持されてきました。しかし、その一方で、環境負荷の増大や劣悪な労働環境といった社会問題が指摘されており、近年では持続可能性が問われています。

 

ファストファッションの歴史と背景

ファストファッションは、20世紀後半に登場しました。その発展は、消費者ニーズや技術革新、経済環境の変化と密接に関連しています。

1. 1970年代: ファストファッションの始まり

1970年代、トレンドを迅速に取り入れた衣料品を短期間で供給する新たなビジネスモデルが生まれました。

  1. 1990年代: グローバル化と拡大

1990年代には、製造コストを抑えるためアジア諸国に生産拠点が移り、低価格の商品供給が可能になりました。また、グローバル化の進展により、ブランドは各地で事業を拡大し、ファストファッションが世界中に広まりました。

3. 2000年代: デジタル時代と需要の加速

2000年代に入ると、インターネットやSNSの普及により、トレンドが瞬時に広がるようになりました。消費者は新しいデザインを即座に知り、短期間で手に入れたいと望むようになりました。これに応える形で、ファストファッションは商品開発から販売までのサイクルをさらに短縮化し、消費者の需要に応えてきました。

 

ファストファッションはその利便性で多くの支持を集めましたが、その背後には様々な課題が存在します。これらの課題については次以降で詳しく触れていきます。

 

代表的なファストファッションブランド  

 

ファストファッションの問題点について触れる前に、よりイメージを詳細なものにするために代表的なファストファッションブランドをご紹介します。

  • ZARA(ザラ)

      • 発祥地: スペイン
      • 特徴: デザインから販売までを約2週間で完了するスピードが特徴。洗練されたデザインが幅広い層に支持され、グローバル市場で圧倒的な存在感を誇ります。
  • H&M(エイチ・アンド・エム)

      • 発祥地: スウェーデン
      • 特徴: 低価格でトレンドアイテムを提供しつつ、商品ラインを幅広く展開。近年はサステナブルファッションへの取り組みも強化しており、古着回収プログラムなどを実施しています。
  • UNIQLO(ユニクロ)

      • 発祥地: 日本
      • 特徴: 高品質な素材を使った実用的でシンプルなデザインが特長。他のファストファッションブランドとは異なり、ベーシックアイテムの安定供給で独自のポジションを確立しています。
  • SHEIN(シーイン)

    • 発祥地: 中国
    • 特徴: オンライン専業のファストファッションブランドとして急成長。SNSマーケティングを駆使し、若い世代を中心に人気を博しています。短期間での多品種少量生産が可能な体制が強みです。

みなさんも一度は身に着けたことのあるブランドがあるのではないでしょうか。では、このようなファストファッションはどのような社会問題を起こしているのでしょうか。

ファストファッションがもたらす社会問題

ファストファッションは、便利さと手軽さで支持される一方、環境問題労働者の権利侵害消費文化の変化など、深刻な社会問題を引き起こしています。

環境への影響

ファストファッションは、大量の資源を消費し、短期間で捨てられる製品が膨大な廃棄物を生み出しています。例えば、服1着生産するに当たり必要な水は2,368リットルが必要とされ、廃棄された衣料品は年間9,200万トンにのぼります。また、染色や加工の過程で排出される化学物質が、発展途上国の河川や土壌を汚染し、生態系や住民の健康に悪影響を及ぼしています。

 

環境省:令和2年度 ファッションと環境に関する調査業務 -「ファッションと環境」調査結果

 

労働環境の問題

ファストファッションの多くは、低賃金の労働者に依存しています。バングラデシュの縫製労働者の月収は約96ドルとされ、生活費を賄うには不足しています。さらに、工場の安全基準が守られていないケースも多く、2013年のラナプラザ崩壊事故では1,100人以上が死亡しました。こうした現場では、長時間労働過酷な環境も問題となっています。

ラナプラザ崩壊事故:https://ideasforgood.jp/glossary/rana-plaza-collapse/

消費者行動への影響 

ファストファッションは、使い捨て文化を促進し、消費者が必要以上に衣料品を購入し短期間で捨てる行動を助長しています。この結果、繊維廃棄物の増加や、物を長く大切に使う意識の低下を引き起こしています。また、トレンドに依存する購買習慣が定着し、過剰消費が問題となっています。

ファストファッションに対しての各国の取り組みと規制

ファストファッションが引き起こす環境や労働問題を受けて、各国では持続可能なファッション産業を目指す取り組みや規制が進められています。以下では、主な国や地域の事例を紹介します。

ヨーロッパのファストファッションに対する取り組み

欧州連合(EU)は、ファストファッションに対する規制の先頭を走っています。 2022年には「持続可能な製品規則」を発表し、製品設計の段階からリサイクル可能な素材の使用を義務付ける方針を打ち出しました。また、衣料品の耐久性や修理可能性の向上を目的としたガイドラインも整備しています。さらに、一部の国では衣料品廃棄に対する課税が検討されており、廃棄物削減を強く促しています。

フランスでは、「循環経済法」を制定し、未販売の衣料品を廃棄することを禁止しています。企業には在庫品の寄付やリサイクルが義務付けられ、廃棄物の減少と再利用の促進を目指しています。

アメリカのファストファッションに対する取り組み

アメリカでは、州レベルでの規制が進められています。ニューヨーク州は、ファッション持続可能性法案を提案し、一定規模以上のファッション企業に対し、サプライチェーンにおける環境影響や労働条件の開示を求めています。また、カリフォルニア州では、縫製労働者の最低賃金を保証する法律が成立し、労働環境の改善が進められています。

アジアのファストファッションに対する取り組み

ファストファッションの生産拠点が集中するアジアでも、規制の動きが見られます。特に、インドやバングラデシュでは、国際的な圧力を受け、労働基準の強化環境規制の導入が進められています。バングラデシュでは、ラナプラザ崩壊事故を契機に、建物の安全基準や労働者保護の強化を目的とした国際協定「アコード」が締結されました。

日本のファストファッションに対する取り組み

日本では、衣料品のリサイクルや再利用を促進する取り組みが行われています。多くの企業が古着回収プログラムを導入し、消費者から不要な衣料品を回収してリサイクルしています。また、政府レベルでも循環型社会の実現を目指し、企業に対して環境配慮型の製品設計を奨励しています。

持続可能なファッションへの転換

ファストファッションがもたらす課題を解決するために、持続可能なファッションへの転換が進められています。多くのブランドが環境に優しい素材の使用や、水や化学薬品を削減する技術を採用し、廃棄物を減らすためのリサイクルや修理プログラムを展開しています。これにより、製品のライフサイクル全体で環境負荷を軽減する取り組みが進んでいます。

また、公正な労働環境の実現も重要な課題です。一部の企業ではフェアトレード認証を取得し、適正な賃金や安全な労働環境を提供することで、労働者の権利を守る努力がなされています。

消費者も、質の高い衣料品を長く使う意識や、リサイクルされた製品を選ぶなど、持続可能な選択をすることが求められています。企業の取り組みを評価し、環境や社会に配慮した製品を支持する消費行動が、持続可能なファッションの普及に欠かせません。これらの取り組みを企業と消費者が一体となって進めることで、より良い未来を目指す動きが加速しています。

ファストファッション問題-消費者としてできること

ファストファッション問題の解決には、消費者の行動が重要です。「本当に必要か」を考えた購入や、質の高い衣料品を長く使うことが廃棄物削減につながります。古着の購入やリサイクルを活用することで資源の浪費を抑えられます。また、環境や労働に配慮したブランドを支持することで、企業の取り組みを後押しできます。小さな選択の積み重ねが、持続可能なファッションへの変化を促します。

まとめ 

ファストファッションは、手軽にトレンドを楽しめる一方で、環境負荷の増大、労働環境の問題、消費者行動への影響など、多くの社会問題を引き起こしています。

各国や企業は規制やサステナブルな取り組みを進めていますが、問題解決には消費者の意識と行動が欠かせません。必要なものを選び、長く使う意識やリサイクルの活用、持続可能なブランドを支持することで、より良い未来を作ることに貢献できます。

企業、政府、消費者が協力して持続可能なファッションを推進することが、これらの問題を解決する鍵です。一人ひとりの小さな行動が重要です。

update: 2025.2.3