
食品ロス(フードロス)の現状と解決に向けた取り組みを知ろう!
update: 2025.2.3
Contents
食品ロスの現状と解決に向けた取り組みを知ろう!
皆さんは食品ロスという言葉を聞いたことはありますか?
世界には食べられるのに捨てられてしまう食品が多くあり、それらを「食品ロス」といいます。
そしてそれは、「もったいない」ではすまされない、様々な問題を引き起こしているのです。
この記事では、食品ロスが引き起こす問題と発生する原因、食品ロス削減に向けた取り組みについてご紹介します。
【2024年最新】食品ロスの現状と解決に向けた取り組みを知ろう!
食品ロスの現状
日本では、年間約472万トン(※1)の食品ロスが発生しています。これは、飢餓に苦しむ人々に向けた世界の食糧支援量480万トン(※1)とほぼ同等に相当します。
また、WWF(世界自然保護基金)とイギリスの大手小売り会社のテスコが発表した報告書(※2)によると、世界では年間約25億トンの食品ロスが発生しています。これは、世界で栽培・生産された食品の約40%に当たります。
この膨大な量の食品ロスが、様々な問題を引き起こしているのです。
出典:(※1)食品ロスについて知る・学ぶ | 消費者庁 (caa.go.jp)
食品ロスが引き起こす問題
食品ロスが引き起こす問題は大きく分けて3つあります。
1つずつ紹介していきます。
1.環境への負荷
食品が無駄になるということは、その生産・製造・配送などの過程で使われる膨大な量の水やエネルギーも無駄になっているということです。
また、水分を多く含む食品廃棄物の焼却には多くのエネルギーが必要であり、二酸化炭素も排出されます。WWFの報告書(※2)によると、世界で年間に排出される二酸化炭素のうち、約10%が食品廃棄物(の焼却?)によるものといわれています。
焼却後の灰を埋め立てる場所が限られていることや、鉛やカドミウムといった有害物質を含む灰が土壌や水質、大気を汚染することも問題となっています。
2.経済的損失
食べものを無駄にすることで、生産・製造・配送・販売などに伴う労働力やコストが必要以上に使われています。また、先述したように食料廃棄物の処理にも、運送代や焼却代などの多くのコストがかかっています。
2022年度の食品ロスによる経済損失の合計は、4兆円(※3)といわれています。
これは、毎日日本全体でおにぎり約1億個分の費用を失っている(※3)計算になります。
出典:(※3)食品ロスによる経済損失及び温室効果ガス排出量の推計結果 (caa.go.jp)
3.食料問題
世界の人口は2080年代半ばに103億人に達する(※4)といわれていますが、現在、世界の栄養不足人口は7億人以上(※5)とされています。食品ロスの問題を早急に改善しなければ、食糧不足・栄養不足で苦しむ人がさらに増加すると考えられています。
出典:(※4)UN projects world population to peak within this century|United Nations (※5)世界の食料安全保障と栄養の現状 SOFI | FAO駐日連絡事務所
食品ロスの分類と発生する原因
● 事業系食品ロスと家庭系食品ロス
食品ロスは、大きく2つに分けられます。在庫管理の不足、過剰生産、規格外品の廃棄、飲食店での客の食べ残しなどによる事業系食品ロスと、家庭での食べ残し、直接廃棄、野菜の皮などの過剰除去による家庭系食品ロスです。
食品ロスの内訳は、事業系、家庭系共に236万トンであり、事業者と家庭双方の取り組みが重要となっています。
-2-800x450.png)
事業系食品ロスを発生させる原因の一つに、「3分の1ルール」というものがあります。これは、賞味期間の3分の1以内で小売店舗に納品するというサプライチェーンにおける慣習のことを指します。3分の1ルールとは、例えば賞味期限が6か月の場合、製造日から2か月以内に納品しなければならないというルールで、この場合、納品までに2か月以上経ってしまった食品は、賞味期限までに充分な期間があるのにも関わらず、廃棄されてしまうのです。この3分の1ルールによって、多くの食品が消費者の元に届く前に廃棄されています。
途上国と先進国の食品ロスの違い
途上国と先進国では、食品ロスが発生する背景に大きな違いがあります。
途上国では、生産設備や保存技術などの不足によって生産・加工過程での廃棄が多いのに対して、先進国では、加工から食品が消費者の元に届く前後での廃棄が多いとされています。
これには、先進国の食品の外観を重視する「外観品質基準」が高いこと、スーパー等での大量陳列、食品を簡単に捨てられる経済的余裕などが影響しています。先進国の一員である日本では、国民1人1人の食品ロス削減に向けた取り組みが特に重要であるといえます。
では、具体的にはどのような取り組みを行えばよいのでしょうか。
食品ロス削減のために家でできる取り組み
食品ロス削減に向けて、家庭でできる取り組みを5つご紹介します。
-
必要な分だけ買う
買い物の前には、家にある食品を確認し、期限内に食べきれる量だけ買いましょう。
大容量で安く購入できる商品には注意が必要です。
食べきれずに、かえって損をしてしまうこともあります。
-
適切に保存する
誤った方法で保存すると、食品の劣化を早めてしまう可能性があります。
一度に食べきれない場合は、冷凍保存などにより長持ちするように工夫しましょう。
-
賞味期限と消費期限の違いを知る
賞味期限:「おいしく食べられる期限」
消費期限:「安全に食べられる期限」
賞味期限が切れていても、まだ食べられるかもしれません。捨てる前に確認しましょう。
-
過剰除去をやめる
果物の皮や野菜のへたを取り除くときは、最大限可食部は残すように意識しましょう。
-
食材を使い切る
「消費者庁のキッチン」では、余りがちな料理や食材を活かしたレシピが紹介されています。参考にして食品ロスを防ぎましょう!
食品ロス削減のために外出先でできる取り組み
食品ロス削減に向けて、外食時などにできる取り組みを3つご紹介します。
-
商品棚の手前から取る
すぐに食べるものは、期限内に食べきれる分だけ、手前の商品から取りましょう。
賞味期限・消費期限の迫っている商品を買うことで、店舗による廃棄の削減につなげることができます。
-
食べられる分だけ注文する
飲食店での食べ残しはすべて廃棄されてしまいます。食べきれる分だけ注文するようにしましょう。
-
食品ロス削減に取り組むお店を選ぶ
外食時には、注文する量を選べるお店や、余った料理を持ち帰れるお店を選びましょう。mottECOのポスターやステッカーを提示して、食品ロス削減に協力しているお店もあります。
mottECO(もってこ)とは?(※6)
環境省が公表している、「飲食店等における食べ残しの持ち帰り」の名称
「もっとエコ」「持って帰ろう」という2つの意味が込められている。

(※6)mottECO ロゴマーク
出典:(※6)mottECO普及啓発資材の公表について | 報道発表資料 | 環境省 (env.go.jp)
食品ロス削減につながるサービス
続いて、食品ロス削減に向けて作られたサービスを3つご紹介します。
TABETEは、飲食店で売れ残った食品を「レスキュー」することで、お得に買えて食品ロス削減にも貢献できるフードシェアリングアプリです。スマホにアプリをダウンロードすることで、簡単に使用できます。
タベスケは、「食品ロスの削減、環境運動への参加、お得な商品の購入を可能にするフードシェアリングサービス」です。商品を出品する飲食店は、食品ロスを削減しつつ収益確保につなげることができるので、TABETEと同様、買う側と売る側双方にメリットのあるサービスとなっています。
Kuradashiは、賞味期限が近い商品や規格外商品をお得に購入できる通販サービスです。購入金額の一部は社会貢献活動の支援にもあてられています。
政府による取り組み
食品ロス削減に向けた国の取り組みとして、食品ロスに関する法律を2つご紹介します。
1.食品リサイクル法
食品リサイクル法(正式名称:食品循環資源の再利用等の促進に関する法律)は、食品メーカーや卸売・小売業者・飲食店などの事業者に対して定められたもので、2003年に施行されました。具体的には、3分の1ルールの見直し、賞味期限の延長と年月表示化(賞味期限の長い商品を日付け単位ではなく月単位で表示する)、飲食店での持ち帰りの推奨などが求められました。
2.食品ロス削減推進法
食品ロス削減推進法(正式名称:食品ロスの削減の推進に関する法律)は、事業者だけでなく、国や地方公共団体、消費者を含む国民全体で食品ロスの削減を目指したものです。2019年に施行されて以降、「てまえどり」などの消費者への啓発や、各主体間の連携など、社会全体での取り組みを推進しています。
地方公共団体による食品ロス改善に向けた取り組み
地方公共団体も、食品ロス削減に向けた取り組みを行っています。ここでは3つの例をご紹介します。
1.東京都 江東区
- フードドライブ
フードドライブ:家庭で余っている食品を持ちより、フードバンク団体等を通じて、福祉団体や施設などに提供する活動(※7)
江東区では、回収窓口を設け、区民が家庭で使いきれなかった未利用食品をこども食堂や社会福祉協議会に提供しています。
出典:(※7)フードドライブにご協力ください!|江東区 (koto.lg.jp)
- 食べきり協力店
江東区では、食品ロス削減に取り組む飲食店を「江東区食べきり協力店」として登録し、紹介しています。

食べきり協力店 ステッカー
出典:ぴかっと食べきり!江東区食べきり協力店のご紹介|江東区 (koto.lg.jp)
2.兵庫県 姫路市
- Utteco Katteco by タベスケ
「Utteco Katteco by タベスケ」は、自治体として全国初の食品ロス削減マッチングサービスです!市民は、市内の飲食店で廃棄になる可能性のある食品をお得に購入できます。食品ロス削減と売上向上により、飲食店側にとっても嬉しいサービスです。
食品ロス削減マッチングサービス「Utteco Katteco by タベスケ」(姫路モデル) | 姫路市 (himeji.lg.jp)
3.大阪府
- 食品ロス削減カードゲーム
大阪府では、たこ焼きを題材に食品ロスについて考えることができるカードゲームを作成しています。小学校での出前授業などで活用されています。
出典:なんでやろう?食品ロスカードゲーム|もったいないやんへらそう食品ロス (osaka-foodlosszero.jp)
まとめ
日本では、食品ロスが年間約472万トン(2022年度)発生しています。食品ロスは家庭系と事業系に分けられ、その発生原因は様々です。そして、それらは多くの経済的損失を生み、環境問題や食糧問題など、世界的な問題を引き起こしています。
しかし、食品ロス削減に向けて、私たちができることは沢山あります。個人でできることを意識する、自分が住んでいる地域の取り組みを調べるなど、食品ロス削減に向けて今日から実践していきましょう。
update: 2025.2.3