
ストリートチルドレンが生まれる原因とは?現状と問題、支援方法について知ろう
update: 2025.1.18
Contents
ストリートチルドレンが生まれる原因とは?現状と問題、支援方法について知ろう
「ストリートチルドレン」という言葉を聞いたことはありますか?日本に住んでいるとあまり馴染みのない言葉かもしれませんが、特に発展途上国と呼ばれる国々において、深刻な問題となっています。
この記事では、ストリートチルドレンの実態と、彼らに対する様々な支援活動についてご紹介します。
ストリートチルドレンとは
「ストレートチルドレン」とはどのような子どもたちのことを指しているのでしょうか。
ストレートチルドレンという言葉に明確な定義はありませんが、国連のOHCHR(※1)によると、以下のように定義づけられています。
①生存ないし仕事のために街路に依存する子どもたちで、ひとりでいるか、仲間や家族といるかは問わない。
②より広い意味で、公共の空間との強い結びつきを形成し、日々の生活とアイデンティティに対して街路が不可欠な役割を果たしている子どもたち。
※ここでいう公共の空間とは、学校や病院などの公共の建物は含みません。
つまり、「ストリートチルドレン」とは、様々な要因から路上で生活している子どもたちを広く捉えた言葉となります。
こうした子どもたちは、路上で土産物や花を売ったり、靴磨きをしたり、荷物を運んだり、交通量が多く危険な道路で窓ふきなどの仕事をしたりしています。生きていくためには、ごみを漁って売れそうなものを探したり、物乞いをしたり、時には盗みを犯すこともあります。お金が手に入らず、飲食店などの残飯を分けてもらうこともありますが、栄養のあるものを十分に食べることはできません。
出典:(※1)Rights of Children in Street Situations | OHCHR
マンホールチルドレン
「ストリートチルドレン」と似ている言葉に、「マンホールチルドレン」があります。
マンホールチルドレンとは、1992年のモンゴルの社会主義体制崩壊を機に、行き場を失ってマンホールで暮らすようになった子どもたちのことを指します。モンゴルでは、厳冬下には気温が-30度まで下がり、路上にいては凍傷や凍死の恐れがあります。そのため、帰る場所がない子どもたちは、ねずみやゴキブリがいる不衛生な環境であるにも関わらず、マンホールの中で暖をとって暮らしているのです。
モンゴル政府や国際機関は、報告書などで「ストリートチルドレン」という呼称を使っており、その実態はストレートチルドレンと同じであると言えるでしょう。
出典:モンゴルの「マンホールチルドレン」の保護活動に関する考察 | 照屋朋子
ストリートチルドレンを取りまく現状
続いて、ストリートチルドレンの推定数や多い地域、年齢、直面するリスクなど、ストリートチルドレンの問題について、その現状をご説明します。
ストリートチルドレンは推定1億〜1億5,000万人以上
世界にはどのくらい多くのストリートチルドレンがいるのでしょうか。国連の調査によると、推定1億から1億5000万人以上存在するといわれていますが、戸籍がないなどの理由から正確な人数を把握することは困難とされています。
ストリートチルドレンが多い国と地域
ストリートチルドレンの人口は、アジアやアフリカ、中南米などの発展途上国と呼ばれる国々に集中しています。発展途上国では、社会保障システムや児童福祉に関する法律が整っていないこと、貧困により家庭崩壊が起こりやすいこと、特にサハラ以南のアフリカ諸国ではエイズ孤児が多いことなどが、その要因として挙げられます。
メキシコ、サンパウロ、リオ・デ・ジャネイロなどの中南米の都市では、アジアの儒教の影響を受けている国々が家族の結びつきを重んじるのに対し、キリスト教の影響による「個人」を尊重する風潮が強いので、家庭崩壊が起きやすいと言われています。それが、ストリートチルドレンを増加させている要因の1つとなっているのです。
日本にもストリートチルドレンはいる?
現在の日本には、ストリートチルドレンはいないと言われています。しかし、家出などの様々な理由から一時的に路上生活をする子どもたちもいます。そういった子どもたちは、基本的にその必要性がなくなるまで最小限の期間、保護されます。

ストリートチルドレンの年 齢と性別
ストリートチルドレンの年齢は、6歳から17歳くらいです。その内、男子が女子に比べて多いとされています。理由としては、男子は女子に比べて家事などの家庭での役割が少ないこと、働き手となること、相対的に見て冒険的で行動的であることが挙げられます。
出典:何が子どもたちを通りへ押しやるのか | 名古屋大学高等教育研究センター
ストリートチルドレンが直面するリスク
次に、ストリートチルドレンがどのような問題やリスクにさらされているのか、ご説明します。
・悪い大人に利用されてしまう
路上で暮らす子どもたちは、出生登録がなされていないといった境遇を悪用する大人からのリスクにさらされています。例えば、性的暴行を含む虐待や犯罪の強要、人身売買、違法な低賃金労働や給料未払いなどです。警察からも、逮捕対象とみなされ、暴行を受けるケースもあります。
・病気と怪我
不衛生な環境下では、皮膚病や感染症など、様々な病気にかかるリスクが高まります。また、多くの子どもが靴を持っておらず、足の裏は擦り傷や切り傷でボロボロです。病気や怪我をしても治療を受けることができず、その苦痛に苦しみ続けている子どもたちが多くいるのです。
・薬物中毒
飢えや病気、怪我による苦痛、辛い経験に対するトラウマや寂しさから逃れるため、薬物に手を出してしまう子どもも少なくありません。こうした薬物の使用は、子どもたちにとって重要な心身の発達に悪影響を及ぼすだけでなく、犯罪などの問題行動を引き起こす可能性を高めます。
・大人になっても安定した職に就けない
ストリートチルドレンは、1日中働いたり、食べ物を探したりしているため、学校に行く暇がありません。教育を受けることができないため、将来働ける場所の選択肢は少なく、大人になっても貧困から脱却できない負のループに陥ってしまうのです。
ストリートチルドレンを生む原因
なぜストリートチルドレンは生まれてしまうのでしょうか。その原因を、子どもたちの状況を大きく3つに分けてご説明します。
1.家族のために収入を稼ぐ子どもたち
親の病気により収入源が絶たれてしまった場合や、貧しい家庭の子どもたちは、家計を支えるために、学校に行かずに働かなければなりません。ストリートチルドレンが多い国々では、多くの人々が仕事や豊かな暮らしを求め、貧しい農村地域から都市部に移り住んできます。しかし、人口が集中した都市部で職を見つけることは簡単ではなく、家族の生活を維持するために子どもたちが路上で働かざるを得なくなっているのです。
雇用主にとって、文句も言わずに低賃金で働く子どもたちは大人に比べて好都合であり、違法であると知ったうえで採用しています。これにより、子どもたちが大人の働き口を奪うこととなり、親の代わりに働く子どもの数をさらに増やしてしまっているのです。
2.自ら路上生活を選ぶ子どもたち
親の再婚相手との関係がうまくいかなかったり、親からの虐待や育児放棄といった環境に耐えられずに、自ら路上での生活を選ぶ子どもたちもいます。日本では、そういった子どもたちに対する支援や救済システムが整っていますが、ストリートチルドレンが多い国々では、手を差し伸べてくれる大人がいない場合が多いのです。また、家庭崩壊を経験した子どもは、自分の家庭も崩壊させてしまう可能性が高いといわれています。成長の過程で信頼できる大人に出会い、愛情に満ちた人間関係の構築を体験しない限り、いざ自分が親になった際に、どのように円満な家庭を作っていけば良いのか分からないのです。そうして、彼らの子どもたちもまたストリートチルドレンとなってしまうのです。
3.両親のいない子どもたち
戦争や紛争、自然災害が起きた際に、家族が亡くなってしまったり、混乱の中で離ればなれになってしまったり、それらにより貧困が加速し、両親に見捨てられてしまったり、、。そうやって親を失ってしまった子どもは、1人で生きていかなければなりません。彼らは、戦争や自然災害などにより家族が死んでしまった記憶や自分の身に起きた恐怖を抱えながら、安心できる場所や頼れる大人のいない路上で生活していくことになるのです。

ストリートチルドレンの撲滅に向けた支援
様々な理由から、路上での生活を余儀なくされているストリートチルドレン。過酷な状況で苦しむ子どもたちがゼロになるように、様々な組織による支援が行われています。また、日本に住む私たちにできる取り組みもまとめました。
UNICEFによる支援
世界の子どもたちの命と権利を守るために活動しているUNICEF(国連児童基金)は、政府やNGOと協力してストリートチルドレンの問題に取り組んでいます。例えばフィリピンでは、地元NGOやホテルなどの企業と連携し、働きながら学べる環境や職業訓練の機会を提供しています。また、ストリートチルドレンを生む根源である貧困問題に着目し、子どもたちの教育や医療へのアクセスを確保するために、家庭への条件付き現金給付プログラムを通じて子どもの育成支援も行っています。
各国政府による支援
続いて、政府が行うべき支援や現行で行われている支援について見ていきましょう。
・法や制度の改正
ストリートチルドレンの問題の背景には、貧困と子どもたちを守る制度や政策が不十分であることが挙げられます。路上での生活を余儀なくされている子どもたちは、保護されることなく、心身ともに安全に成長できる場所を確保することができません。また、教育を受けることができないため、貧困の連鎖を断ち切ることができません。こうした現状に対し、法律や制度の整備および改善が求められています。法律で児童労働を規制したり、劣悪な労働状況を改善したりするのです。また高い授業料を払えずに学校に行くことができない子どもを減らすため、教育制度を整えることも重要です。
・養護施設への収容
ストリートチルドレンを養護施設に収容することで、子どもたちは危険な路上生活から解放され、安全な環境で生活することができます。また、基礎的な教育を受ける機会が得られ、社会で必要な知識を身につけることもできます。ただし、施設に入っても十分なケアがなされない、職員による虐待が行われるといったケースもあり、政府は全ての保護施設がしっかりと機能するように、管理する必要があります。
・フィリピン政府の事例
フィリピンでは、社会福祉事務所(DSWD)がストリートチルドレンの救済に取り組んでいます。主な支援内容は以下の3つです。
・ストリートチルドレンの就学を支援する奨学金プログラム
・補助的給食プログラム
・収入向上プロジェクト
また、子どもに危害を与えうる大人への取り締まりも厳しくなっています。
例えば、親が同伴していなければ条例違反となり、子どもと歩いていたり食事をしているだけで誘拐や人身売買とみなされて逮捕される場合があります。
NGOなどの団体による支援
NGOなどの団体も、ストリートチルドレンへの支援活動を行っています。
・ワールド・ビジョン
ワールド・ビジョンとは、キリスト教精神に基づいて、開発援助、緊急人道支援、アドボカシーを行っている国際NGO団体です。世界中の貧困地域において、それぞれの地域に根差した開発援助を行い、子どもたちの健やかな成長を目指すチャイルド・スポンサーシップというプログラムを通して、ストリートチルドレンの問題にも取り組んでいます。フィリピンでは、子どもの保護についての教員向けの研修や、子どもの権利や責任についての子どもたち向けの啓発活動などを行っています。
・アクション
アクションは、日本とフィリピンで活動しているNPO法人です。フィリピンでは、現地のNGOと連携し、「青空教室」といった保護施設を運営しています。また、海外ボランティアプログラムやスタディツアー、NGOの仕事を体験させ、次世代を育成するための短期海外インターンを日本人向けに実施し、フィリピンの現状を多くの人に伝える活動も行っています。
・ストリートチルドレンを考える会
「ストリートチルドレンを考える会」では、日本での学習会やセミナー、チャリティイベント、メキシコとフィリピンでのスタディツアーなどを実施し、現地の人を含む様々な人々との交流の機会を提供しています。また、会員へのニュースレターやSNS、本やDVDなどの制作、貸出、販売を通じ、ストリートチルドレンの現状を発信しています。さらに、寄付金や訪問などを通して現地のNGOへの支援を行っています。
・国境なき子どもたち
「国境なき子どもたち」は、「国境を越えて全ての子どもに教育と友情を」をビジョンに掲げ、世界各国の子どもたちに教育機会を提供し、自立を支援している認定NPO法人です。ストリートチルドレンを対象に、食事や寝床、教育クラスの提供などを行う施設の運営などを行っています。
・Change the future for children
不動産業を行っている有限会社 金大が設立したNPO法人「Change the future for children」は、フィリピンのメトロマニラのストリートチルドレンに対する支援活動を行っています。主な活動内容は、現地の業者や自治会、警察と連携した子どもたちへの温かい食事の提供や、学用品の提供、大学卒業までの奨学金制度のサポートなどです。

私たちにできる支援
最後に、ストリートチルドレンのいない世界を目指して、日本にいる私たちにもできることをご紹介します。
・ストリートチルドレンについて知る
まず重要なのは、ストリートチルドレンの現状を知り、理解を深めることです。文献や、上記でご紹介した団体や国際機関のサイトなどから情報を集めましょう。
・ストリートチルドレンについて広める
ストリートチルドレンについて知ることができたら、それらの情報を発信しましょう。SNSを用いて国際組織の活動を広めたり、オリジナルのパンフレットを作成・配布したり、写真展などのイベントを開催したりして、日本での問題意識や支援の輪を広げていきましょう。
・支援活動や寄付に参加する
上記でご紹介した団体などが行っている活動や、寄付に参加してみましょう。イベントに参加したり、実際に現地に行ってみたりすることで、様々な人との出会いを通して自分自身の考え方を深めるだけでなく、次の行動につなげていくことができます。また、ストリートチルドレンの支援活動を行う団体の多くが、寄付金で資金をまかなっています。1人1人の寄付が積み重なり、現地で多くのストリートチルドレンを救っているのです。
まとめ
世界には、発展途上国を中心に多数のストリートチルドレンが存在しています。このような路上生活をしている子どもたちは、身体的にも、精神的にも、毎日様々なリスクにさらされています。その背景には貧困があり、子どもたちを守る制度や政策が十分に整えられていないことがさらに問題を深めています。このように安心安全に暮らすことのできない子どもたちが多くいるという事実を知り、ストリートチルドレンを無くすためにはどうすれば良いのか、私たちも考える必要がありそうです。
update: 2025.1.18