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日本における難民問題とは?さまざまな問題の現状や背景、解決策をわかりやすく解説

update: 2024.12.23

日本における難民問題とは?さまざまな問題の現状や背景、解決策をわかりやすく解説

 

難民に関する問題は日本国内でも決して少なくありません。

難民の受け入れに関する問題や、難民が日本で生活する上での困難難民に対する差別や偏見など、さまざまな問題があります。

この記事では、そのような日本における難民問題の現状を、原因や背景とともに詳しく解説しました。

記事後半には難民問題の解決策もご紹介し、さらに解決のために私たちにできることもまとめているので、ぜひ最後までご覧ください。

 

そもそも日本の難民問題とは?難民に関する様々な問題の現状

そもそも「難民」とは、自国にいると迫害を受けるおそれがあるために、他国に逃れて国際的な保護を必要としている人々のことです。中には、自国にいると命の危険に晒されてしまう人もいます。

そのような背景で自国から逃れてきた難民の人々は、実際に日本にも多くいます。

以下では、そんな難民に関する日本の諸問題を解説します。

 

極端に少ない日本の難民受け入れ数

一般的によく言われているように、日本の難民の受け入れ数は国際的に見て非常に少ないのが現状です。

2023年には、合計13,823人が難民申請を行い、そのうち303人が難民として認定されました。

近年日本の難民認定数は増加傾向にありますが、下記のグラフ(2022年)を見ても分かる通り、難民の「認定数」と「認定率」はいずれも、日本は未だ他国に比べて圧倒的に少ないと言えます。

(出典:認定NPO法人 難民支援協会, https://www.refugee.or.jp/refugee/japan_recog/)

 

さらに日本では、難民認定をされず在留資格も得られなかった場合、入管施設での無期限の収容本国への強制送還を強いられることも問題視されています。

特に本国への強制送還は、難民を再び危険な国に送り返すことになりかねず、「難民を送還してはならない」とする難民条約のノン・ルフールマンの原則に反しているとして、国内外から多く批判されています。

 

難民が日本で生活する上での困難

難民の人々が日本で生活する上では、未だに多くの困難があります。

特に難民申請中の人々の生活は非常に不安定です。具体的には、難民申請中は児童扶養手当や福祉手当といった社会保障が受けられず、またビザの種類によっては国民健康保険にも加入できないため、医療費は全額自己負担しなければなりません。

まだ難民として認定されていないのだから当然だと思われるかもしれませんが、実際に日本の難民申請は結果が出るまでに平均3年以上、場合によっては10年以上かかるため、その申請者が本当に「難民」だったとしても、認定されるまでのその長い間、不安定な生活を強いられてしまうのです。

また、仮に難民申請を得られても、元々日本に来て学び、働く予定だった「移民」とは異なり、自国の危険に迫られて急遽逃れてきた難民の人々にとっては、日本の社会や文化に適応する難しさもあります。

 

難民に対する差別

元々外国人に対する差別が問題視されている日本ですが、その中で特に難民に対する差別も根強くあります。

その原因については次の章でも説明しますが、主に「難民」への偏見や誤解に基づいて、特にSNSやインターネット上には難民に対するヘイトスピーチ(差別的発言)が多く書き込まれています。

さらに、実際に難民認定を受けた人が居住する物件を探している際に、難民であることを理由に入居を断られたり、就職においても「難民」であることやその難民の出身地が理由で雇用を拒否されることなども少なくありません。

 

難民問題の原因・背景|なぜ難民問題はなくならないのか

ここまで、日本における難民問題の現状について解説しました。

しかしそもそも、なぜそれらの難民問題が日本で生まれ、また今もなくならないのでしょうか。

この章では、上で説明した難民問題の原因や背景について一つずつ解説します。

 

厳格な難民認定基準

まず、日本の難民の受け入れ数が少ない理由の一つに、難民認定基準の厳しさがあります。そもそも「難民」の定義は国際社会で厳密に定められておらず、現状は各国の判断に委ねられている部分が大きいのですが、日本の認定基準はその中で特に厳しいと言われているのです。

具体的には、「難民」の解釈が狭く、また日本では「難民」であることの証明のために客観的な証拠と、高い信憑性が求められます。

たしかに、「偽装難民」の認定を防ぐために「難民」である証拠の客観性や信憑性は重要ですが、現実的に難民たちがそのような証拠を持って自国から逃れてくることは稀であり、特に日本ではその証明のハードルが高いため、実際に自国で命の危機に晒されていたとしても、日本で「難民」であることを認めてもらえないというケースが多くあるのです。

 

不公平な認定手続き

さらに日本の難民認定では、認定基準の厳しさに加えて、その手続き自体が難民にとって不公平だという指摘もあります。

特に、審査の結果「難民」として認定されなかった場合、不認定の理由や根拠が十分に提示されず、本人や弁護士による異議申し立ての余地がないという問題があります。

他にも、「難民」であることの証明のために必要な情報や証拠を、難民自らが集める必要があることや、審査の面接において適切な通訳が手配されないこと、さらに証拠書類はすべて日本語で作成しなければならない点など、難民申請者にとってきわめて不利な状況で手続きを行わなければならないのです。

 

言語の壁、就職の難しさ

言語の壁は、難民の生活の中でも非常に多くの困難をもたらしています。

実際に、日本語が理解できないために必要な情報を得ることができず、特に就職活動の場面では、就職のための具体的な方法や、就職先の選択肢などの情報を得られないために、自分のスキルを活かせる職業や収入の安定した仕事に就けないという問題があります。

さらに、仮に日本語が理解できたとしても、そのほか身体的・精神的・金銭的な困難を抱えている多くの難民たちにとっては、日本という「外国」で就職し、安定的な生活を送ることは、それだけで決して簡単なことではないのです。

 

難民に対する偏見・誤解

先ほど説明した難民への差別の背景にあるのは、日本人の難民に対する偏見と誤解です。

特に日本では、「難民=危険な存在」「難民=日本社会の負担」といったイメージが根強くあります。

もちろん、それらは偏ったイメージであり、誤った理解です。実際には、難民たちは自国の紛争や人権侵害といった、危険から逃れてきた人々であり、また逃れた先でも適切なサポートがあれば、自立して働き、その国に納税することができます

しかしそのような偏見や誤解があるために、上で説明したような入居拒否や雇用拒否といった差別につながっているのです。

また、難民に対する国民のそのような否定的なイメージが根強いために、国が難民の受け入れや生活の支援に積極的になれないという指摘もあります。

 

難民問題をなくすための3つの解決策

ここまで説明してきた日本の難民問題の現状と原因・背景に基づいて、最後にそれらの問題をなくすための3つの解決策をご紹介します。

 

①国際的な難民認定基準の統一

そもそも日本の難民の受け入れ数が少ない理由の一つは、国際的な「難民」の定義があいまいで、その中で日本の認定基準が極端に厳しいから、ということでした。つまり現状では、多くの国で一般的に「難民」として認められる人も、日本のような特定の国では認められないという問題があるのです。そのため、まずは国際的な難民の認定基準を可能な限り統一させ、どの国でも適切な難民認定が行われるようにすることが大切です。実際に、現在UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)は、難民認定のガイドラインを作成するなどして、その統一的な基準の策定に取り組んでいます。

②難民認定手続きの支援、生活支援

難民申請者にとって公平な認定手続きを実現させるために、日本語による証拠書類の作成をサポートしたり、適切な通訳・弁護士を手配するなどの支援ができます。さらに、難民や難民申請中の人々に対し、日本語の教育支援を行ったり、就職活動などでの必要な情報を提供したりすることで、難民の人々が日本で生活する上での障壁を減らすことができます。

③難民に対する偏見や誤解をなくす

最後に、難民に対する偏見・誤解をなくすことで、それらが原因となって生まれている日本での難民への差別の解消につながります。また同時に、難民について正しい知識を持ち、難民の保護に理解を示す人を増やすことができれば、国が今より難民の受け入れや生活の支援に積極的に動く可能性もあります。

 

難民問題を解決するために実際に行われている取り組みの事例については、下記の記事をご覧ください。

日本国内で難民支援に取り組むNPO・NGO団体8選|活動内容とともにご紹介

 

まとめ|難民問題解決のために私たちにできることは?

このように今日の日本では、

・難民の受け入れ数が極端に少ない

・難民が日本で生活する上での困難が多い

・難民に対する差別

といった問題があり、それぞれの問題の背景には、厳格な難民認定基準や手続きの不公平性、言語や就職における困難、さらに難民に対する偏見・誤解などが挙げられました。

そしてそれらの課題を解決するための、以下の3つの解決策についても説明しました。

①国際的な難民認定基準の統一

②難民認定手続きの支援、生活支援

③難民に対する偏見や誤解をなくす

 

では、その中で私たちにできることは何でしょうか。

まず取り組みやすいのは、実際に日本で難民支援をしているNPOなどの団体に寄付をすることです。

特に上に挙げた解決策②の難民認定手続きの支援や、難民の生活支援を行っている団体に寄付をすることで、日本に逃れてきた難民の人々が日本でより安定的に生活できるように支援することができます。

また、解決策③「難民に対する偏見や誤解をなくす」に取り組むことも可能でしょう。具体的には、SNSやインターネットを通して、難民に対する正しい知識・理解を発信することで、偏見や誤解をなくし、同時に日本人の難民に対するイメージを変えていくことができます。

update: 2024.12.23