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選択肢が少ない社会を変える——ローランズが花で実現する、誰もが咲く働き方

選択肢が少ない社会を変える——ローランズが花で実現する、誰もが咲く働き方

株式会社ローランズ 代表 福寿満希さんインタビュー

はじめに

「働きたくても働けない」――日本には約1,000万人以上の障害と向き合う方々がいます。しかし、従事できる仕事の幅が限られているケースも少なくありません。本当にやりたい仕事に就くことが難しい現実があります。

この課題に、花という商材を通じて挑むのが株式会社ローランズです。「みんなみんなみんな咲け」というスローガンのもと、従業員140名のうち100名が障害や難病と向き合いながら、フラワーギフトやブライダルフラワーを提供しています。

今回は、代表の福寿満希さんに、障害者雇用の課題から、ローランズならではの事業の仕組み、そして就活生へのメッセージまで、詳しくお話を伺いました。

働きたくても働けない——356万人が直面する選択肢の少なさ

――御社が考える日本の社会課題について教えてください。

福寿さん:

私たちは今、「みんなみんなみんな咲け」という願いを込めたスローガンのもと、従業員140名のうち100名が障害や難病と向き合いながら働いています。お花屋さんのサービスと、そのノウハウを生かして企業さんの障害者雇用の支援を行っていますが、手帳を持っているけれども働けていない方が全国に356万人いらっしゃるといわれているんですね。

そういった方たちが働けるようになっていく社会になればもちろんですけど、障害者手帳を持って障害と向き合っている人たちにとっては、そもそも仕事の選択肢が限られていて、好きなことを仕事にするということがとても難しい状況にあるんです。

 

――具体的には、どういった課題があるのでしょうか。

福寿さん:

求人票を見ても、清掃業務やデータ入力など、特定の職種に募集が偏っているケースも少なくありません。働きたいと思っても、働きたいと思える職がなかったり、自分ができる仕事に出会えなかったりして、働けるけれども働きに出ることができない、その機会が限られているという状況が今あるかなと思います。

好きなことを仕事にする、好きな自分になるという選択が広がっていったらいいなと、そんな思いで活動しております。

フラワーサービスと障害者雇用支援——二つの事業で選択肢を拡げる

――具体的にどんな事業を展開されているのでしょうか。

福寿さん:
お誕生日などのお祝い事に贈られるフラワーギフトやブライダルフラワーなどのフラワーサービス全般を提供しています。

加えて、自社で10年以上障害者雇用に取り組んできたノウハウを生かして、これから障害者雇用に取り組む企業様に向けた雇用のサポートもさせていただいております。

 

――障害のある方と一緒に働く中で、どんな工夫をされていますか。

福寿さん:

花束ができるまでには、花を仕入れるところから、入荷した花を仕分けて水揚げ作業をすること、花を組むこと、ラッピングすること、リボンをつけること、配送することと、いろんな工程に分かれています。

例えばハサミが使えなければラッピングというところを極めてもらう。そうすると、全工程ができる人よりも、その工程を極めたその人にお願いした方が早く仕上がります。それぞれの工程を担当する人の「これならできる」をつなげながら最高の商品を作る工夫をしています。

 

――一つの商品に何人が関わっていますか。

福寿さん:

商品によっては約30人のスタッフが関わっているものもあります。それぞれの技術が積み重なっててきた商品を、大手の企業様だったり、有名ブランド様が買ってくださっています。そういった企業様が継続的に購入くださることが、当事者一人一人の仕事の質を認めてくださっている結果なのだと思っています。

目指すのは「排除なく、誰もが花咲く社会」

――御社が目指す社会について教えてください。

福寿さん:

私たちは「排除なく、誰もが花咲く社会」というビジョンを掲げています。

幸せであるという状態が全ての人のためのものであると思っているので、好きなことで生きていくとか、働くとか、好きな自分になるという選択をできる人が限られてしまっている状態は変えていきたいなと思っています。

誰もが花咲くということが本当の意味でみんなのものになることを願って、「みんなみんなみんな咲け」というスローガンを定めています。

無関心な人に振り向いてもらう——商品力で勝負する戦略

――障害者雇用という社会性を前面に出すのではなく、お花屋さんとしての強みを大切にされている印象を受けました。

福寿さん:

私たちは原宿、丸の内、晴海フラッグ、天王洲にも店舗を持ち、一般のお客様にプロダクトを届けています。

社会事業に取り組む時、社会課題を前面に出して共感を作りながら広げていく方法もあると思いますが、いかに無関心な人たちに振り向いてもらうかが重要だと思っています。

「障害と向き合っている人が作っているから」というストーリーで振り向いてもらうのではなく、商品の価値で振り向いてもらう。手に取って、共感してもらって、ファンになってもらう。振り向く理由は、商品のクオリティやデザインの力。その次に共感を作るという順番を考えています。

 

――それは障害者雇用を始めた当初から考えていたことですか。

福寿さん:

最初から思っていました。”好き”や”得意”が活かされると、結果その方の頑張る意欲が変わり、お仕事のアウトプットの量や質も上がります。

なので、「かわいそうなので支えてください」というコミュニケーションは求めていないんです。「この花を作っている人たちすごいでしょ」って思っているんです。ポジティブにローランズという商品や世界観に関わってもらいたいと思っています。

ヒューマンサポートチーム——業務上の上司とは別の相談窓口

――多様なメンバーと働く中での難しさや工夫は何ですか。

福寿さん:

お花屋さんの業務は、接客、制作、水替え、配送準備など多岐にわたります。だからこそ、誰もが安心して働ける環境をつくるためには、業務を整理し、標準化していくことが重要だと考えています。

それと、私たちの中で特徴的な体制として、業務上の上司とは別に、ヒューマンサポートというチームがあります。心の状態とか生活面で困ることがあっても、業務上の上司には伝えにくいですよね。

なので、メンタル的なところや生活の部分は別の相談できる窓口を作っています。この仕組みは約1年前から試行的に始め、今年から正式に導入したんですけど、いつでも相談できる状態ができて欠勤が減ったという結果が出ています。

学生時代の出会いが原点——「好きを仕事に」の選択肢がない現実

――福寿さんご自身の学生時代の経験について教えてください。

福寿さん:

学生時代、特別支援学校の教員免許を取得しました。当時私は大学3年生で、働きたくもないし、一生遊んで暮らしたいと思っていた時代。夢もなかったし、好きなこともなかった。

でも、特別支援学校で出会った子供たちは働くということに夢を持っていたんです。お花屋さんになりたい、ケーキ屋さんになりたい、パイロットになりたいと話していて、すごくいい顔をしていました。

ただ当時の障害と向き合う生徒たちの就職率は15%ぐらいで、なりたい自分になる、好きな仕事に就くということもほとんど叶わない状況でした。一方で自分にはたくさんの選択肢があって。障害の有無にかかわらず、好きなことやなりたい自分に挑戦できることは、全ての人の選択肢になってほしいと強く感じました。

 

――起業後、挫折や諦めたくなった瞬間はありましたか。

福寿さん:

一番しんどかったのは、3年間お花の業務だけをやって、やっと障害者雇用ができるようになったタイミングです。5人ぐらいのチームで会社を運営していて、いよいよ障害者雇用をしたいと5人に話をしたんですね。でも「障害のある人にお花の仕事は難しいと思う」と反対されてしまって。結果、初期メンバーは全員離脱するということになってしまいました。私自身の夢を語ってこなかったことも、大きな原因だと思います。
つらかったですが、その分、絶対に実現してやろうという気持ちになれて、頑張ることができました。事業も軌道に乗った今は、当時のメンバーも戦友として応援してくれています。

 

求める人材は「工夫を続けられる人」

 

――社会課題解決のキャリアに向いている人、そうでない人の違いは何でしょうか。

福寿さん:

いわゆるソーシャルビジネスといわれる事業は、正直通常のビジネスよりも難しい。ただ物を売るだけじゃなくて、事業を進める上での必要以上の制約が出てきたりする。素材にこだわることでデザインや耐久性に制限が出たり、リサイクルしたもので商品を作ろうと思うと工程が増えて原価が上がって価格競争で勝てなくなったり。

その難しい状況の中でいかに情熱を燃やして突破し続けられるか。そのために工夫し続けることが楽しいと思える人は、社会課題解決のキャリアに向いていると思います。

入社後の大変さとやりがい

 

――入社した場合、どんな大変なことがあり、どんなやりがいがありますか。

福寿さん:

ローランズは100名以上の障害や難病と向き合うスタッフが混ざって働いている状態なので、当事者の方々の体調が崩れないような環境作りを行いながら業務遂行していくことが求められます。

同じ業務量であっても、人によって感じ方や身体への影響はことなります。いかに環境を作りながら、お客様の求めるクオリティと納期と要望に応えていくかというバランスを取っていくことの難しさはすごくあります。

 

当事者の表情を見るために

 

福寿さん:

一方で、やっぱりやりきった時の達成感はすごくあります。このチームで作ったものを、たくさんの人の手に取っていただくことが見えたり、実際のお礼の言葉が届いたり、SNSに上がって「可愛い」と言っていただけたりする。それをみて嬉しそうな表情になる仲間を見ると、私たちは喜びを感じたり、やりがいを感じます。その一瞬のその表情のために、全てのことをやっているという感じですね。

 

――このお仕事で必要になる能力などはありますか?

福寿さん:

ローランズでは、さまざまな障害や難病と向き合うスタッフと共に働いています、そのため、相手の状況や特性を理解しながら、丁寧に対話を重ねられることが重要です。

商品づくりも、一度で完璧に進むとは限りません、うまくいかなかった時に、次はどんな風に工夫していくと良いかを考えていくような、粘り強さが求められます。

社会課題に向き合う仕事には、理想や情熱だけでなく、日々の現場で実践し続けるためのタフさも必要だと感じています。

就活生へのメッセージ——生きがいになる仕事

 

――社会課題解決をビジネスとして実現していきたい学生や社会人に向けて、メッセージをお願いします。

福寿さん:

社会事業はすごく大変ですけど、ものすごく生きてる感じがする仕事になります。私は数字を追いかける仕事ができませんでしたが、その数字の先にある誰かの苦しみが取り除かれていくということには、ものすごいモチベーションを感じられました。

どんな仕事でも必ず数字の先に人がいるとは思いますが、その中でも社会構造の支援から漏れてしまっている人に手が届き、苦しい状況にある人が減っていくことに時間を使っていく、命を削っていくということは、生きる意味になっていくと感じます。皆さんが暮らしている中で憤りを感じること、「どうしてこんなことが起こるんだろう」って思うことは、ボランティアや寄付だけでなく、ビジネスという手段でアプローチをしていくこともできます。

憤りを感じているけど、傍観しているだけなんて、勿体無い。本気で変わってほしい社会課題があれば、ビジネスとして腰を据えて、憤りを感じるその状況をダイレクトに変えていくことにぜひ挑戦してほしいです。社会課題は一個一個が繋がって連鎖しているので、みんなで、総力戦で、課題解決の輪を広げていけたらいいなと思います。

 

――社会課題解決を目指す人は、専門の会社に入る必要がありますか。

福寿さん:

一般企業の中でもできると思います。例えば、大手の資本力だからこそできるサステナビリティな取り組みもあるので。大手企業の中で社会解決に繋がる企画を提案するとか、事業部門を立ち上げるパターンも実際に見てきました。自分が今持っている環境や資源の中でどう取り組めるかを考えてアプローチすることも一つの手段だなと思います。

おわりに

障害があっても「好きを仕事に」できる社会を目指す株式会社ローランズ。花という商材を通じて、選択肢を拡げ、誰もが花咲く社会を実現していく——そんな壮大なビジョンに共感し、自分の原体験とつながる課題に本気になれる人材を求めています。

効率や利益だけを追求するのではなく、誰かの苦しみを取り除くことに時間を使う。そんな生きがいのある仕事に、あなたも一歩を踏み出してみませんか。

 

update: 2026.6.3