
日本の林業を持続可能な産業へ——テクノロジーで挑む、森林課題の解決【株式会社森未来】
update: 2026.3.5
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日本の林業を持続可能な産業へ——テクノロジーで挑む、森林課題の解決
株式会社森未来 代表 浅野さんさんインタビュー
はじめに
日本の国土の約7割を占める森林。豊かな森林資源を持ちながらも、林業は構造的な課題を抱え、持続可能な産業として成立しにくい状況が続いています。この課題に、ITとテクノロジーの力で挑むのが、木材流通プラットフォーム「eTREE(イーツリー)」を運営する株式会社森未来です。
今回は、代表の浅野さんに、林業が抱える社会課題から、同社の事業内容、そして就活生へのメッセージまで、詳しくお話を伺いました。
日本の林業が抱える構造的課題
――御社が考える日本の林業における社会課題はどういったものがあるのでしょうか。
浅野さん: 大きくは構造的な課題になると思います。日本の森林率は67%、国土の約7割が森林に覆われています。一方、国産材自給率は40%程度で、多くを海外からの輸入に頼っています。世界的には木材の需要は高まり、森林面積は減少している。これは環境破壊につながっています。
日本は非常に森林に恵まれている状態ではあるものの、林業という産業自体が補助金なくして成り立っていないという背景があります。それが林業という産業を続けていく上で大きな課題だと認識しています。
――それはつまり、日本には木はたくさんあるけれども、それを資源として生かせていないということですか。
浅野さん: そうですね。資源として活かしていないのと、しっかり資金として還流できていないというのがあります。昨今、SDGs以降、木材はカーボンニュートラルな素材として選ばれていますが、実際に木材を使った結果、日本の森林が潤っているかというと、必ずしもそうではない。木材利用と森林が豊かになるというのが必ずしもイコールではないんですよね。
フェアトレードに近い考え方で、しっかり使った分を1次産業の方々に還元していくことが重要だと思います。
サプライチェーンの断絶
浅野さん: 森林業と木材業と建設業は全然別の産業になっています。建設業の方々は一般の方々と同じぐらいの森林知識しかない。どこの森林にどれくらいの木材があるのかというデータもわからないし、山側の人たちも情報を開示していないので、需要と供給のミスマッチが起きています。
一般消費者には見えにくい課題
――一般的な消費者の目線でいうと、どういった影響がありますか。
浅野さん: 木材や森林はなかなか生活に入ってきづらい。身近な課題として認識しづらいんです。でも実は、CO2の吸収源、土砂崩れの防止、水源の涵養、生物多様性の保全など、間接的にすごく我々の生活に結びついています。
例えば東京の水源は奥多摩や山梨県ですが、都市部に住む人間がその森林に対して水源の価値を支払っているかというと、そうではないですよね。
文化的価値を守る
浅野さん: 究極の効率に走っていけば、文化的な要素がどんどん失われていくと思うんです。我々人間が他の生物と違うのは、文化があること。伝統工芸や木材、林業産業に対する価値やリスペクトがないと人生って面白くない。
適切に収益還元できる仕組みを作っていきたい。我々はその中の「木材」という分野でやっています。
ITとデータベースで木材流通を革新
――御社はどういった形でその課題を解決しようとしているのでしょうか。
浅野さん: 今我々がやっているのは木材のサプライチェーン事業、流通事業です。日本全国には多種多様な木材がありますが、その情報が従来から流通に閉ざされてしまっている。建設産業の方は木材業界にタッチするすべがないので、その情報を透明化して建設業の方々に適正に届けていく事業をやっています。
具体的には、全国400数十社の材木屋さんとデータ連携しており、どこにどういった木材があるのかすぐに答えられるデータベースを持っています。設計の方々から「長野県産の木材が欲しい」というご相談をいただいたら、すぐに見積もりや加工業者さんを出せる。このように包括的にやれる企業はなかなか存在しません。
eTREEという木材プラットフォームメディアと木材データベースは、表と裏の役割です。データベースは社内で使い、一般の方々に見ていただくのがeTREE。eTREEでは木材イベント、事例、補助金情報など、木材・森林・林業に関する情報発信をしています。
そこから木材を使いたいというご相談をいただいた時に、データベースとつなげて具体的な見積や提案をする。木材事業者の方が商品を載せたい場合は無料で掲載できますが、データベース登録もしていただく。本当に表と裏の役割分担です。
社会意識の醸成
浅野さん: まだ構想段階ですが、森林の課題は社会課題でもあります。今はBtoBで建設業界と木材業界という閉ざされた世界でビジネスしていますが、もっと社会的に環境負荷の低い木材を使った方がいいという声が多くなれば、企業も動き、建設業界にも仕事が入ってくる。社会意識の醸成はすごく重要で、eTREEを通じて環境問題や課題、アクションの情報発信を今後やっていきたいと思っています。
目指すのは「誰もがサステナブルな選択を簡単にできる社会」
――御社が目指す社会を教えてください。
浅野さん: 誰もがサステナブルな選択を簡単にできる社会です。
環境に良いアクションをするためのハードルが高すぎると、木材は使いづらい。FSC認証やPEFC認証といった国際的な森林認証、あるいはデューデリジェンスがされた持続可能な木材を使いたくても、やるべきことが多すぎて途中で諦めてしまう。
我々としては、ここから買えば環境に配慮された木材で、次の世代に森林をつないでいけるという選択肢を選ぶハードルを極力低くしていくことを目指しています。
テクノロジーで林業をアップデート——仕事のやりがい
――自分たちの事業の意味を感じられるのはどういう時ですか。
浅野さん: 当社は半分がIT系職員です。基本的にはテクノロジーで社会を変えていくのが前提の思想。DXという意味では最も課題が多いのが林業木材業界だと思っています。
木材の見積や価格表は手書きのFAXで出てきたりする。それをデータ化し、数万点になると人間では処理できなくなるので、AIに過去積み上げたデータベースを学習させて最適な回答をしていく。テクノロジーを使って木材流通をアップデートしていくところは、創業以来ずっとやっていて、ようやく実証段階まで追いついてきました。
ミッションのサステナブルフォレストを本当に実現させようと思っている会社です。林業を持続可能にしていくという壮大な課題を解決するには、テクノロジーが不可欠。このテクノロジーを使い切ればこういう世界観が描けるというところが見えてきていて、そこに向かって日々従業員一同開発しているのは非常にモチベーションが上がる瞬間です。
――未来像が見えてくる時があるということですね。
浅野さん: はい。あと逆説的に、林業現場や木材工場、展示会でいろんな木材を見ているだけでも楽しい。ゴリゴリにテクノロジーを使う経営者も多いですが、その先に幸せはあるのかみたいなのもあったりしますね。
答えがない課題に挑む難しさ
――御社の仕事における難しさ、必要な能力は何でしょうか。
浅野さん: 答えがない課題をやっているので、正解がない中で常にやっているのが、合う人もいれば合わない人もいます。
データベース化してAIで回答して最適な木材を提供していくのが本当に市場に受け入れられるのか。仮説を持って取り組んでいますが、本当に受け入れられるかわからない。現場のエンジニア、デザイナーは回答を調整したり、UIを作ったり、決して答えがない。答えがない中でやり抜いていく能力が必要で、結構大変なことだと思います。
――それは仕事の面白さと表裏一体ですね。
浅野さん: そうですね。面白いと思ってくれる人であればすごく合うと思います。
建設業を対象にした60兆円市場と経営状況
――林業を対象にした事業の経営状況について教えてください。
浅野さん: 我々のビジネスは林業や木材業からではなく、建設業の方から収益をいただくモデルです。そちらの市場は60兆とあり、ものすごく大きい。ただ、建設業もサプライチェーン上では下流で、木材流通はさらに下流なので儲かりづらいのはあります。
業界自体がすごくアナログなので、DX化していく苦労はとても多いです。優秀な方がより高収入を得たいなら、もっと適切な業界はあると思います。でも、ミッションサステナブルフォレストに共感して課題を解決したいという方には、すごくマッチ度は高いと思います。
――社員の給与は前年比6%以上の賃上げもされていますね。
浅野さん: 頑張ってもらっているので、上げた結果そういう数字になっています。ただ私としては、林業が儲からないから我々も厳しいのではなく、林業を魅力的な産業にしていかないといけない。そのために林業自体の収益を上げ、我々の会社の収益も上げて給料を上げていく。他のIT産業やコンサルティング企業と比べても遜色ない企業にしていこうという思いがあるので、どんどんベースを上げていきたいですね。
キャリア形成について-多様な成長経路
――新卒で入社した場合、どんな業務を担当しますか。
浅野さん: 営業系と開発系、事務に分かれます。新卒や第2新卒の方は、まず営業系の職種がいいと思います。木材の知識が必要なので。
営業は2パターンあり、クライアントに木材を提案する職種と、サプライヤーから木材を調達する仕入れです。どちらかに興味がある分野からやっていただく。
その後、データベース開発やデューデリジェンスシステムの開発、あるいは工学部でエンジニア志望の方はエンジニアをやってもらう。特性と興味によりますね。
――働くことで身につく力は何でしょうか。
浅野さん: 基本的なITスキルは比較的高く身につくと思います。おそらく経験として身につくのは、課題解決能力、答えがないことに対して仮説を立てて実行していく能力ですね。それが成功したら自信になるし、他社に行っても通用すると思います。
――スペシャリスト型とオールラウンダー型、どちらでしょうか。
浅野さん: 両方です。専門性はついた方がいい。新卒で営業系にいた方がいいというのは、課題と業界特性を現場感を持って理解していた方が、どの職種にいても通用するから。その後、開発側や営業のスペシャリストなど、いろんな道を用意しています。
人材構成と評価制度
浅野さん: 社員は25人ぐらいで、新卒は4人ぐらい。中途の方が多いですが、20代が半分ぐらいです。最初の新卒は2020年に採用し、今はマネージャーとして会社を牽引しています。新卒には5年、10年後の幹部候補になってほしいと思っています。
評価制度は、等級制度とサブグレードを組み合わせています。期初に目標を定め、評価に基づいてグレードが上がる。一般的に大企業等で定めている人事制度を導入したので、適正に評価していく仕組みになっています。
求める人材は「自ら仕事を作れる人」
――どんな人材を求めていますか。
浅野さん: 自ら仕事を作れる人ですね。課題を見つけてできる人。我々の会社のステージがまだ進んでいないので、タスクベースで仕事をお渡しできない。課題を与えて、「この課題解決して」というのが仕事になる。自分で課題を設定できる人が向いています。
――逆に言うと、タスクベースで振られるのを待つ方は向いていない?
浅野さん: フェーズや職種によります。与えられた仕事を確実にやっていく領域も徐々に増えていますが、まだまだきめ細やかなマネジメントはできていない状況です。
就活生へのメッセージ——次世代に何を残すか
――最後に、この記事を読んでいる学生さんへメッセージをお願いします。
浅野さん: 世界の森林はどんどん破壊されています。今後、世界人口が60億から80億、100億と増えていく中で、森林資源はどんどん枯渇していくのがわかりきっています。
今の学生の人たち、20代の人たちが30、40歳になっていく時、こういった未来がわかっている社会に対して、自分自身の時間とエネルギーをどこに使うのかが人生の面白さだと思います。
当社の課題に限らず、しっかりと次の世代に向けてどういった社会を残していくかというところに、ぜひエネルギーを傾けてもらったら非常に嬉しいです。その傾ける先として、環境に関心があれば、当社ではその環境を用意できると思います。
おわりに
林業を「憧れの産業」にすることを目指す株式会社森未来。テクノロジーの力で林業の課題を解決し、次世代に豊かな森林を残していく。そんな壮大なビジョンに共感し、自ら課題を見つけて挑戦できる人材を求めています。
効率だけを追求するのではなく、文化的な価値を守りながら、持続可能な社会を作る。そんな未来に向けて、あなたも一歩を踏み出してみませんか。
株式会社森未来:https://shin-mirai.co.jp/
木材情報プラットフォーム「eTREE」:https://www.etree.jp/
update: 2026.3.5
