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SWGsとは?SDGsの次を担う「持続可能なウェルビーイング目標」の全貌

update: 2025.12.28

SWGsとは?SDGsの次を担う「持続可能なウェルビーイング目標」の全貌

2030年以降のポストSDGs時代を見据え、「経済成長」から「人々の幸福」へとパラダイムシフトを図る新しい概念として注目されるSWGs(Sustainable Well-being Goals)。本記事では、SWGsの定義、SDGsとの違い、社会的意義、そして企業・自治体での実践可能性まで、信頼できる情報源に基づいて体系的に解説します。

SWGsとは

SWGs(Sustainable Well-being Goals)は「持続可能なウェルビーイング目標」と訳され、2030年以降のポストSDGs時代における新しい社会目標の枠組みとして議論されている概念です。SDGsが経済成長を前提とした「開発目標」であるのに対し、SWGsは人々の「幸福(ウェルビーイング)」を中心に据えた目標への転換を提唱しています。

ただし、現時点でSWGsは国連などの国際機関によって正式に採択された目標ではありません。主に学術界や先進的な企業・自治体において提唱・実践されている段階にあり、特に日本では慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンターを中心に「SWGs宣言」が発表されるなど、研究・実践が進められています。

SWGsが注目される背景

SDGsが抱える課題と限界

SDGsは2015年に国連で採択され、貧困削減や気候変動対策など17の目標に世界中で取り組んでいます。しかし、実施から約10年が経過する中で課題も指摘されています。第一に、SDGsは依然として経済成長を前提とした枠組みであり、環境負荷の削減と成長の両立が実際には困難という批判です。第二に、目標達成度を測る指標が数値的・量的なものに偏り、人々の生活の質や幸福感といった質的側面が十分に評価されていません。

ウェルビーイングへの関心の高まり

経済成長が必ずしも人々の幸福度向上に結びつかないという研究成果が蓄積されています。いわゆる「イースタリンの逆説」では、一定の所得水準を超えると経済成長と幸福度の相関が弱まることが示されています。ブータンの「国民総幸福量(GNH)」やOECDの「より良い暮らし指標(Better Life Index)」など、GDP以外の指標で社会の豊かさを測る試みが国際的に広がってきました。

企業経営においても、従業員のウェルビーイング向上が生産性や創造性の向上につながるという認識が広まり、人的資本経営の文脈で重視されています。こうした多様な領域での動きが、SWGsという新しい目標概念の提唱につながっています。

参考・出典

SWGsの定義

Sustainable Well-being Goalsの意味

SWGsを直訳すると「持続可能なウェルビーイング目標」となり、「持続可能性(Sustainability)」と「ウェルビーイング(Well-being)」という二つの核心的な価値が統合されています。「地球環境と調和しながら、すべての人々の真の幸福を実現する」という理念を表現しています。

現時点では国連などによる公式な定義は存在せず、提唱者や文脈によって若干の違いがありますが、「経済成長至上主義からの脱却」と「人間と地球の真の繁栄」を目指すという方向性は共通しています。

SWGsが目指す社会像

SWGsが描く社会像は、「より多く、より速く」という成長主義から、「より良く、より幸せに、より持続可能に」という質的価値観への転換です。経済指標GDPの増加を最優先するのではなく、人々が心身ともに健康で、社会的つながりを持ち、自然環境と調和した生活を送れる社会を目指します。

また、SWGsは個人のウェルビーイングだけでなく、コミュニティや地球全体のウェルビーイングも視野に入れ、すべての人々が公平に幸福を享受でき、かつそれが地球の生態系を破壊しない形で実現される社会を理想としています。

SWGsにおける持続可能性の考え方

SWGsにおける持続可能性は、SDGsよりも包括的で厳格です。ストックホルム・レジリエンス・センターが提唱したプラネタリー・バウンダリー(地球の限界)の概念を踏まえ、経済活動を地球の再生能力の範囲内に収めることを前提とし、現在世代の幸福追求が将来世代の機会を奪わないという世代間衡平性も重視します。

参考・出典

SDGsとSWGsの違い

SDGsの基本的な目的

SDGsは2015年9月の国連サミットで採択された17の国際目標で、「誰一人取り残さない」という理念のもと、貧困撲滅、健康と福祉、質の高い教育など包括的な社会課題の解決を目指しています。その根底にあるのは「持続可能な開発(Sustainable Development)」という概念であり、経済成長、社会的包摂、環境保護の三つの側面を統合的に推進します。

SWGsが重視する価値の違い

最も根本的な違いは、「開発(Development)」から「ウェルビーイング(Well-being)」への価値転換です。SDGsが貧困率の低下、就学率の上昇など数値化可能な指標で進捗を評価するのに対し、SWGsは人々が実際に幸福を感じているか、生活に満足しているかといった主観的・質的側面を重視します。

また、SDGsが「問題の解決」に焦点を当てるのに対し、SWGsは「望ましい状態の創造」に重点を置き、すべての人々が積極的に幸福で充実した人生を送れる社会を目指すという、より能動的・創造的なビジョンを持っています。

開発目標から幸福目標への転換

この転換は20世紀型から21世紀型の進歩観への移行を象徴しています。ノーベル経済学賞受賞者アマルティア・センが提唱した「ケイパビリティ・アプローチ」は、人々の真の豊かさを単なる所得ではなく、価値を置く生き方を選択できる自由として捉え、この考え方は国連開発計画(UNDP)の人間開発指数(HDI)にも反映され、SWGsの理論的基盤の一つとなっています。

参考・出典

SWGsが捉えるウェルビーイングとは

ウェルビーイングの基本的な定義

ウェルビーイング(Well-being)は「幸福」「健康」「良好な状態」と訳される多面的な概念です。世界保健機関(WHO)は健康を「身体的、精神的、社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病や虚弱でないということではない」と定義しており、これがウェルビーイング概念の基礎となっています。

心理学では、快楽的ウェルビーイング(喜びや満足)と幸福論的ウェルビーイング(人生の意味や自己実現)の二つの側面から研究されています。OECDの「より良い暮らし指標」では、住宅、所得、雇用、コミュニティ、健康、生活満足度など11の次元で測定しています。

身体的・精神的・社会的側面

身体的側面には健康状態、栄養、運動、休息が含まれます。精神的側面では心の健康、情緒の安定、自己肯定感、人生の目的意識などが中心です。社会的側面は人間関係の質、社会的つながり、コミュニティへの所属感などを含みます。ハーバード大学の75年以上にわたる研究では、良好な人間関係が幸福と健康の最も重要な予測因子であることが示されました。

経済指標では測れない価値

GDPは市場で取引される財やサービスの総額を測るものであり、家事労働、ボランティア活動、自然環境の価値、社会的つながりの豊かさなどは含まれません。また、交通事故や環境汚染の処理費用もGDPを押し上げますが、これらは本来発生しない方が望ましいコストです。

基本的なニーズが満たされた後は、所得の増加よりも、自由時間、人間関係の質、健康、コミュニティへの貢献感などが幸福により大きく寄与します。SWGsは、人々の生活の質、主観的幸福感、社会的結束、環境の質など、多次元的な指標によって社会の進歩を評価することを重視しています。

参考・出典

ポストSDGs時代におけるSWGs

2030年以降の国際アジェンダの動き

SDGsの達成期限である2030年が近づく中、国連では「持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム(HLPF)」などを通じて、2030年以降のアジェンダについての検討が行われています。気候変動と生物多様性の危機の深刻化、デジタル化やAIなどの技術革新、パンデミックの経験を踏まえたレジリエンス(回復力)の重視などが議論されています。

国連事務総長アントニオ・グテーレス氏は、2024年の「未来サミット」において、将来世代の権利を保護し、長期的視点での意思決定を促進する「未来世代のための行動」を提唱しました。

SWGs宣言とその位置づけ

日本では、慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンターを中心とした研究者グループが「SWGs宣言」を発表しています。この宣言は国際的な公式文書ではなく、学術界や実務界からのボトムアップの提案です。経済成長を最優先とする従来モデルからの脱却と、人々のウェルビーイングを中心に据えた社会への転換が主張されています。

現時点でSWGsは国際的な合意や公式な採択には至っておらず、あくまで一つの提案・議論の枠組みとして存在していますが、政策立案者、企業経営者、研究者などの間で関心を集めています。

日本発の取り組みとしての意義

日本は超高齢社会であり、人口減少と経済の成熟化を経験している先進国です。経済成長が鈍化する中で、どのように社会の持続可能性と人々の幸福を維持するかという課題は、まさにSWGsが問題とする「成長後の社会」のモデルケースと言えます。日本には「足るを知る」「もったいない」「和」といった、物質的豊かさだけでない価値観が伝統的に存在してきたことも背景にあると考えられます。

参考・出典

SWGsとソーシャルビジネスの関係

ソーシャルビジネスの定義

ソーシャルビジネスとは、社会的課題の解決を主たる目的としながら、ビジネスの手法を用いて持続可能な事業活動を行う取り組みです。経済産業省は「社会的課題の解決を目的とした事業であり、事業の成果を社会に還元する」ものと定義しています。貧困、高齢化、環境問題、教育格差、地域活性化などの社会課題に取り組み、NPO法人、株式会社、協同組合など多様な組織形態で運営されています。

SWGsと社会課題解決の親和性

SWGsが目指す「持続可能なウェルビーイングの実現」という目標は、ソーシャルビジネスの理念と高い親和性があります。ソーシャルビジネスは利益最大化ではなく社会的インパクトの創出を優先し、SWGsはGDP成長ではなく人々の幸福を優先するという点で、両者は価値観を共有しています。

ソーシャルビジネスがSWGsの実践的な担い手となる可能性があり、逆にSWGsはソーシャルビジネスに理論的根拠と評価枠組みを提供する関係にあると考えられます。

企業活動におけるSWGsの活用

企業がSWGsの視点を取り入れることで、従業員のウェルビーイング向上、顧客や地域社会への価値提供、環境負荷の削減など、多面的な企業価値の創出が可能になります。近年広がっているESG投資やサステナビリティ経営の文脈でも、SWGsの考え方は親和性が高く、企業の長期的な価値創造の指針となる可能性があります。

参考・出典

企業・自治体におけるSWGsの実践例

企業経営におけるウェルビーイング視点

一部の先進的な企業では、従業員のウェルビーイングを経営戦略の中心に据える動きが見られます。週休3日制の導入、フレックスタイム制の拡充、メンタルヘルスケアの充実など、働き方改革を通じたウェルビーイング向上の取り組みが進んでいます。これらは生産性向上や人材確保にもつながるとして、人的資本経営の一環として位置づけられています。

自治体政策と地域社会への応用

自治体レベルでは、住民のウェルビーイングを政策目標に掲げる動きが出始めています。ニュージーランドは世界で初めて「ウェルビーイング予算」を導入し、政策決定においてGDP成長率だけでなく、国民の幸福度、健康、環境の質などを考慮する仕組みを構築しました。日本でも一部の自治体が住民の幸福度調査を実施し、政策立案に活用する試みが行われています。

評価指標としての活用可能性

SWGsを企業や自治体の評価指標として活用する際には、主観的幸福度調査、健康指標、社会的つながりの測定、環境指標など、多次元的なデータ収集と分析が必要となります。定量的データと定性的データを組み合わせた総合的な評価枠組みの構築が課題です。

SWGsの課題と限界

ウェルビーイングの数値化の難しさ

ウェルビーイングは主観的で多面的な概念であり、客観的に測定することが困難です。幸福度調査は文化的背景や個人の性格によって回答が影響を受けます。また、短期的な満足と長期的な充実感のバランス、個人のウェルビーイングと社会全体のウェルビーイングのトレードオフなど、評価が複雑になる要素が多く存在します。

国際的な合意形成の課題

現時点でSWGsは国際的に合意された目標ではなく、SDGsのような普遍的な枠組みとなるには、多様な文化、経済発展段階、価値観を持つ国々の間で合意を形成する必要があります。特に途上国にとっては、まだ基本的な経済発展が必要な段階であり、「成長後」を前提とするSWGsの考え方がそのまま適用できるかは議論の余地があります。

SDGsとの併存・移行の問題

SDGsの達成期限が2030年であり、SWGsがその後の枠組みとして提唱されていますが、SDGsの目標すら達成できていない現状で、新たな枠組みに移行することの是非については慎重な検討が必要です。SDGsとSWGsを段階的に統合していくのか、並行して推進するのか、移行のプロセスについては明確な方針が示されていません。

SWGsの今後の展望

国際社会での位置づけの可能性

SWGsが国際的な公式目標として採択されるかは不透明ですが、ウェルビーイングを重視する価値観自体は、徐々に国際社会に浸透しつつあります。国連の「幸福度報告書」、OECDのウェルビーイング測定枠組み、各国の幸福度調査など、既存の国際的な取り組みとSWGsの考え方を統合していく形で発展する可能性があります。

企業・投資・政策への影響

ESG投資の拡大、人的資本経営の重視、ステークホルダー資本主義への転換など、企業を取り巻く環境は既にSWGsの方向性と一致しつつあります。今後、企業価値評価や政策評価においてウェルビーイング指標が より重視されるようになれば、SWGsの考え方は実質的に社会に浸透していくと考えられます。

私たち一人ひとりへの意味

SWGsは単なる政策目標ではなく、私たち一人ひとりがどのような社会を望み、どのように生きるかという問いかけでもあります。経済成長や物質的豊かさを追求するだけでなく、健康、人間関係、自然とのつながり、社会への貢献など、多様な価値を大切にする生き方を選択することが、SWGsの実現につながります。

まとめ

SWGsが示す新しい持続可能性

SWGsは、経済成長を前提としたSDGsから、人々のウェルビーイングを中心に据えた新しい持続可能性の概念への転換を提唱しています。地球の限界内で、すべての人々が真に豊かで幸福な生活を送れる社会の実現を目指すものであり、現時点では国際的な公式目標ではないものの、ポストSDGs時代の重要な議論の一つとして位置づけられています。

幸福を中心に据えた社会への転換

「開発」から「幸福」へ、「量的成長」から「質的充実」へという価値観の転換は、21世紀の人類が直面する環境制約と社会課題を乗り越えるための重要な視点です。SWGsは完成された解決策ではなく、私たちが共に考え、実践し、改善していくべき方向性を示す概念として、今後の議論と実践の積み重ねが期待されます。

 

update: 2025.12.28