
日本の移民問題の総まとめ:現状・メリット・課題・海外の事例から読み解く
update: 2025.12.15
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日本の移民問題の総まとめ:現状・メリット・課題・海外の事例から読み解く
近年、日本は少子高齢化が進み、労働力不足や社会保障の財源確保といった課題に直面しているなか「移民問題」は大きなテーマとなっています。
この記事では日本の現在の移民状況や、移民が増加するメリットと課題、海外の事例から
日本の移民問題について解説していきます。
移民とは

移民問題は労働力不足や雇用問題、社会保障への影響、人道支援の問題など様々な社会問題と絡み合っています。そのため、移民問題は今注目の議題です。
移民の定義は国によって様々で、曖昧なものとなっていますが、国際移住機関(IOM)は「移民」を「自分の国籍国または通常の居住地から移動し、移動先が新たな通常の居住地となっているような人」と定義しています。
移民という言葉は、永住を前提とする人々を指すこともあれば、一時的な滞在者を含む広義の意味で使われることもあります。日本では「移民政策は取らない」という政府の立場がある一方で、実質的には多くの外国人が長期滞在しており、この言葉の定義をめぐる議論も続いています。
移民と難民、外国人労働者、亡命者との違い
外国人労働者とは
外国人労働者とは、一般的に海外から一時的に働きに出る外国人のことを指します。また、滞在して働く期間が決まっていることが多いです。移民の一種ですが滞在期間が限定されている点で「永住を目的とする移民」とは少し異なります。日本では特に、技能実習生や、特定技能制度を利用して働く人々が含まれます。
2019年に導入された特定技能制度では、介護、建設、農業、飲食料品製造業など14分野(2024年時点では12分野に統合)で外国人材の受け入れが進められています。特定技能1号は最長5年の在留が可能で、特定技能2号に移行すれば家族帯同や永住申請の道も開かれます。
難民とは
難民とは、ある特定の人種や宗教、社会集団に属するという理由で自国にいると迫害を受けるおそれがあり、他国に逃れ国際的な保護を必要とする人々と定義されます。難民は国を離れざるを得ない移民の一種であり、生活や安全を守るために移動する点が特徴です。
日本の難民認定率は国際的に見ても非常に低く、2022年の認定率は1%未満でした。これは欧米諸国と比較すると大きな差があり、日本の難民受け入れ政策については国際社会から改善を求める声も上がっています。一方で、難民認定されなくても人道的配慮から在留を認められるケースもあります。
亡命者とは
難民が戦争や災害など幅広い理由で故郷を離れないといけないのに対し、亡命者は政治的、宗教的理由で迫害から逃れるために国を離れる人を指すことが一般的です。難民と比べると、亡命者はより限定的な理由で移動します。こちらも移民の一種ですが、特に自由や権利を守るために移動する移民と言えるでしょう。
日本の現在の移民事情
移民数の推移
2023年の日本に在留する外国人数は1920年の30倍となっている通り、外国人総務省統計局による調査によると毎年移民の数は増え続けていることが分かります。
2023年末時点で、日本に在留する外国人数は約341万人に達し、過去最高を更新しました。これは日本の総人口の約2.7%に相当します。特に2010年以降の増加率は顕著で、10年間で約100万人以上増加しています。在留資格別では、永住者が最も多く約88万人、次いで技能実習が約36万人、留学生が約31万人となっています。
出典:人口統計集2025
移民の国別割合
移民の出身国を見てみると、多い順に1位が中国、2位がベトナム、3位が韓国となっているように主にアジアから来ていることが分かります。
中国籍が約78万人で全体の約23%を占め、ベトナム籍が約52万人で約15%、韓国籍が約41万人で約12%となっています。特にベトナムからの移民は2015年以降急増しており、技能実習生や留学生として来日する人が多いのが特徴です。フィリピン、ブラジル、ネパール、インドネシアなども主要な出身国として挙げられます。在留外国人の約90%がアジア出身者で占められており、日本の外国人受け入れは地理的に近いアジア諸国が中心となっています。
出典:令和6年末現在における在留外国人数について | 出入国在留管理庁
移民が増加した理由
移民の増加には日本の政治的要因が関わっています。日本政府は、外国人留学生を意図的に増やす政策を進めたり、技能実習制度を推進したりすることで、移民の受け入れを拡大しました。こうした施策が移民増加の一因となっています。
しかし、技能実習制度には、働く人が低賃金で長時間働かされることや、日本語が分からず生活に困ることがあります。本来は技術を学ぶための制度にも関わらず、ただ安い労働力として使われてしまっているケースもあります。また、人権が守られにくいことがあり、安心して技能実習生が働けないところは大きな問題と言えます。
技能実習制度の問題点として、賃金未払い、過重労働、パスポートの取り上げ、暴力やハラスメントなどが報告されており、国際機関からも批判を受けています。こうした背景から、政府は2024年に技能実習制度を廃止し、新たな「育成就労制度」への移行を決定しました。新制度では、転職の制限緩和や日本語能力の向上支援など、実習生の権利保護を強化する方針が示されています
一方で、グローバル化の進展によって自然発生的にも移民は増加しています。20世紀のように海外渡航が富裕層に限られていた時代とは異なり、現在ではより多くの人々が経済的に海外へ移動できるようになったことも背景にあります。
また、日本企業の海外展開に伴い、現地法人で働いた外国人材が日本本社で勤務するケースや、国際結婚の増加も移民増加の要因となっています。さらに、円安や日本の賃金水準の相対的低下により、以前ほど日本が「出稼ぎ先」として魅力的でなくなりつつある一方で、アジア諸国の経済発展により、技術習得やキャリアアップを目的とした来日が増えているという変化も見られます。
出典:なぜ、日本に住む外国人が増えたのか?その理由と背景 ~政策による意図的な増加と自然発生的な増加~ | 外国人雇用と外国人マネジメントのすべてがわかる!GLOBALPOWER UNIVERSITY
現在の政府の対応
現在日本政府は「移民政策は取らない」と強調していますが、実態としては労働力不足や移民が日本社会に溶け込めていないなどの社会統合の課題解決のために、外国人の受け入れを拡大し、制度改革を進めています。例としては日本語教育の機会を増やす取り組みや特定技能制度の拡充などです。
具体的な取り組みとして、2023年に「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」が策定され、日本語教育の推進、生活オリエンテーションの充実、行政・生活情報の多言語化、外国人の子どもの就学促進などが進められています。また、出入国在留管理庁では、地方自治体と連携した「一元的相談窓口」の設置を推進し、外国人が生活する上での様々な相談に対応できる体制を整備しています。2024年からは、外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策も更新され、より包括的なアプローチが取られるようになっています。
出典:外国人を受け入れて、一緒に生活するためにすること(2025年度に少し変えました) | 出入国在留管理庁
移民を受け入れるメリット
労働力の確保
日本は少子高齢化が進み、労働力不足が大きな問題になっています。そこで移民を受け入れることは、労働力を確保する有効な方法の一つです。現在は、介護や建設、サービス業など人手が足りない分野で移民が活躍していて、日本経済を支える力にもなっています。
厚生労働省の推計によれば、2040年には日本の労働力人口は約1,100万人減少すると見込まれています。特に深刻なのが介護分野で、2040年には約69万人の介護人材が不足すると予測されています。外国人労働者はこうした人手不足分野を補う重要な役割を果たしており、製造業、卸売・小売業、宿泊・飲食サービス業でも欠かせない存在となっています。また、地方では特に人手不足が深刻で、農業や水産加工業などで外国人材への依存度が高まっています。
社会保障の財源の確保
労働人口の減少で、年金や医療など社会保障の財源の不足が問題となっています。社会保障制度を維持するためには、税金や保険料を支える労働人口が欠かせません。移民が日本で働き、税金を納めることで財源が安定し、制度を持続させやすくなります。
現役世代(15~64歳)1人が支える高齢者(65歳以上)の数は、1990年には5.1人でしたが、2020年には2.1人となり、2050年には1.3人になると予測されています。外国人労働者が社会保険に加入し、所得税や消費税を納めることで、社会保障制度の支え手を増やす効果があります。ただし、長期的に見れば、外国人労働者も高齢化するため、持続可能な社会保障制度の構築には、単なる労働力の確保だけでなく、包括的な政策設計が必要です。
多文化共生社会化
日常生活で文化の違いや価値観の違いは目立つかもしれません。しかし、異なる文化を持つ人や異なる言語を話す人が共に生活し、仕事をすることは新しい交流を生みます。例えば職場では、外国人の同僚と協力して仕事を進める中で、異なる考え方に触れることができます。実際に異文化を経験したり、異なる背景を持つ人たちと直接関わることは、多様性に対する柔軟な姿勢につながります。
多文化共生は教育面でも重要な意義があります。外国にルーツを持つ子どもたちと日本人の子どもたちが共に学ぶことで、幼少期から異文化理解や国際感覚を育むことができます。また、地域コミュニティレベルでは、外国人住民が参加する祭りやイベント、多言語での情報発信などを通じて、住民同士の相互理解が深まるケースも増えています。グローバル化が進む現代において、国内にいながら多様な文化に触れられる環境は、特に次世代の人材育成において大きなメリットとなります。
新たな市場の創出
日本で移民が増えることは、労働力の確保だけでなく新たな市場の形成にもつながります。移民は国内で生活する中で飲食店を利用したり、買い物をしたりして消費者となります。その結果、企業にとって新しい顧客層が生まれ、需要が拡大します。特に飲食業やサービス業では、移民が利用することで売上が伸び、地域経済の活性化にもつながります。また、移民が持ち込む多様な文化や食習慣が新しい商品やサービスの開発を促すこともあります。
実際に、外国人向けの食材店、ハラール対応レストラン、多言語対応の不動産サービス、送金サービスなど、外国人住民をターゲットとした新しいビジネスが各地で生まれています。また、外国人観光客の増加と相まって、インバウンド需要にも対応できる多言語・多文化対応型のサービスが発展しています。さらに、外国人起業家による新規事業も増えており、IT分野や飲食業などで革新的なサービスを提供する事例も見られます。こうした動きは、日本経済に新たな活力をもたらす可能性を秘めています。
出典:日本の移民問題とは?現状の人数と政策、課題をわかりやすく解説 – 中小企業自治体DXニュース
イノベーションの促進
移民の受け入れは、日本社会にイノベーションをもたらす可能性があります。異なる教育背景や専門知識を持つ外国人材が加わることで、企業の研究開発力が向上し、新しいアイデアや技術が生まれやすくなります。特にIT分野やエンジニアリング分野では、グローバルな視点を持つ人材が競争力を高める要因となっています。実際に、シリコンバレーの成功企業の多くが移民によって創業されたという事例もあり、多様性がイノベーションを生み出す原動力になることが証明されています。
移民を受け入れる課題と危険性
社会保障のフリーライダーの増加
移民は社会保障制度に十分な拠出を行う前に医療や年金などの給付を受ける可能性があるため、「フリーライダー」と批判されることがあります。特に低所得層の移民になると、税金として払った額よりも社会保障を享受する額が大きいと言われることもあります。
ただし、この議論には注意が必要です。多くの研究では、若い移民労働者は医療費の使用が比較的少なく、社会保険料を納めている期間が長いため、短期的には社会保障制度にプラスの影響を与えることが示されています。問題となるのは、家族帯同により働かない家族が社会保障を利用するケースや、十分な保険料納付期間がない状態で高齢化した場合です。こうした課題に対しては、在留資格の要件設定や、母国との社会保障協定の締結などによる対応が必要とされています。
異文化対応のためのコスト
移民受け入れには社会保障だけでなく異文化対応のコストも伴います。例えば、学校では移民に対する言語教育や行政サービスの多言語化を進めることが必要です。また、職場や地域でのコミュニケーショントラブルへの対応が行政に求められることもあります。これらは財政や組織運営の負担を増やす要因となります。
治安の悪化
多くの研究では、移民の増加と犯罪率の上昇には直接的な因果関係がないことが示されています。しかし、移民受け入れに伴い治安悪化の可能性が指摘されることもあります。例えば、ごみの分別が守られなかったり、ポイ捨てや路上喫煙が増えたりするなど、生活の中でマナー違反と見られる行動が起こる場合があります。こうした問題は文化や価値観の違いから生じる生活習慣のズレによって発生し、地域社会に不安を与える要因となることがあります。
警察庁の統計によれば、来日外国人による刑法犯の検挙件数は、外国人人口の増加率と比較して必ずしも比例していません。むしろ、2000年代初頭をピークに減少傾向にあります。外国人の犯罪率が高いという印象は、一部の事件が大きく報道されることによる認知バイアスの影響もあると指摘されています。一方で、言語や文化の違いから生じる生活マナーの問題は実際に存在しており、地域住民との摩擦を生む原因となっています。こうした課題に対しては、入国時や居住開始時のオリエンテーションの充実、地域コミュニティでの交流促進、ルールやマナーに関する多言語での情報提供などが有効な対策となります。
雇用機会の競争激化
移民が増えると労働人口が増えるので雇用をめぐる競争が激化します。特に、特別な資格やスキルが要らない仕事、または低賃金の仕事をめぐる競争が激化します。その結果、企業はもっと安い給料でも働いてくれる人がいると考えて給料を下げたり、契約を短くすることがあります。つまり、移民の受け入れによって労働人口が増える分、同時に日本人にとっては雇用に対する不安が高まります。
言語の壁と教育現場での課題
移民の増加に伴い、教育現場では新たな課題が生じています。日本語を母語としない子どもたちが増えることで、学校での学習支援や日本語教育の体制整備が急務となっています。文部科学省の調査によれば、日本語指導が必要な児童生徒の数は年々増加しており、2022年時点で約5.8万人に達しています。教員の負担も増大しており、通常の授業に加えて個別の日本語指導を行うことは容易ではありません。また、保護者とのコミュニケーションにおいても言語の壁が存在し、学校と家庭の連携が難しくなるケースもあります。
保護者が日本の教育制度を十分に理解できず、子どもの学習サポートができないという問題も指摘されています。こうした課題に対応するためには、専門的な日本語教師の配置や通訳の確保など、教育インフラへの投資が不可欠です。また、母語と日本語のバイリンガル教育の推進や、外国にルーツを持つ子どもたちのアイデンティティ形成を支援する取り組みも重要です。
海外の移民問題
アメリカの事例
アメリカには推計で現在約1100万人の不法移民が暮らしていると言われます。トランプ政権のときには、裁判所を通じて強制送還命令を出したりしましたが、バイデン政権では、国境管理を強めながらも、農業など人手不足の分野では移民を活用する動きがありました。つまり、アメリカでは移民を完全に排除するのではなく、受け入れと規制を両立しようとしています。
フランスの事例
フランスでは今、移民が共同体に入り込めず、独立した共同体を形成してしまっています。パリ郊外に移民が集中する地域が形成され、「国の中に別の国がある」と言われる状況になってしまっています。また、移民家庭の子どもはフランス語教育の遅れや経済的困難から学力格差が広がり、社会参加が難しくなるケースが多いです。
オーストラリアの事例
オーストラリアは1989年から「ポイント制」を導入しています。年齢、学歴、職歴、英語力などを数値化し、社会に貢献できると見込まれる人材を優先的に受け入れるようになりました。最低〇〇点以上あれば永住のピザ、もしくは一時的なピザを取得できる、などという仕組みになっています。
つまり、アメリカは不法移民への対応、フランスは統合の壁、オーストラリアは点数方式という特徴がそれぞれにあります。これらの3つの国に共通していることはどの国もどう移民を社会に組み込むかという課題に向き合っているということです。
出典:フランスの移民問題。国の中に別の国が生まれた。|織原松治
不法移民1100万人を抱えるアメリカ トランプ氏が掲げた公約「大量強制送還」の現実味:朝日新聞GLOBE+
第6章 オーストラリアの移民政策の現状と評価-注意深い開国政策による人口増加で成長を実現
日本が移民問題で参考にすべき海外の取り組み
海外の事例から、日本が学べる点は数多くあります。まず、オーストラリアやカナダのようなポイント制度の導入により、日本社会に貢献できる人材を戦略的に受け入れることが可能になります。次に、カナダの包括的な統合支援プログラムは、移民が早期に社会に適応し、生産的な労働力となるための参考になります。
また、ドイツの統合法のような法的枠組みの整備も、移民と受け入れ社会の双方に明確な権利と義務を示すために重要です。日本独自の文化や社会構造を考慮しつつ、これらの成功事例を取り入れることで、より効果的な移民政策の構築が期待できます。
まとめ
日本の移民数は年々増えています。少子高齢社会において移民の受け入れは労働力不足解消や地域経済を支えるという面でメリットも大きいが、社会統合のコストや社会保障のフリーライダーが増える危険性など課題も少なくないです。
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update: 2025.12.15


