
【2026最新】アーバンベアの生態から考える増加するクマ被害との向き合い方|獣害被害の原因と対策
update: 2025.12.13
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【2025最新】アーバンベアの生態から考える増加するクマ被害との向き合い方|獣害被害の原因と対策
近年、日本の都市部でクマの目撃が相次いでいます。かつて山深くに暮らしていたはずのクマが、なぜ人の生活圏に姿を見せるようになったのでしょうか。ここでは、その背景と広がる被害、そして私たちが取るべき対策を、多角的に解説します。
アーバンベア(都市型クマ)とは
2023/2025年新語・流行語大賞においてノミネート
2023年「OSO18/ヒグマ“アーバンベア(都市型クマ)”」が、また2025年には「クマ被害/緊急銃猟」が、社会の関心を強く反映する言葉として流行語・話題語にノミネートされました。アーバンベアという言葉は、山懐だけに限らず、住宅地・通勤路・市街地周辺にもヒグマが出没・居着きする現象を指します。
このノミネートは、単なる流行語以上の意味を持ち、「野生動物との共生」「人里安全」「環境変化」の議論をあらためて社会に投げかけるシンボルとして位置づけられています。
参考:【流行語大賞】「OSO18/アーバンベア」トップ10入り「それだけクマに関する話題が多かった」 – 社会 : 日刊スポーツ
参考:流行語大賞に緊急銃猟/クマ被害 「まれに」から「隣にある脅威」に | 毎日新聞
OSO18とは
ここでは2023年にノミネートされた「OSO18」について解説します。
北海道・標茶町周辺で、前足幅18 cmほどのヒグマが2019年から約4年間で牛66頭を襲った事件を受け、「OSO18」というコードネームが付けられました。OSO18の事件は、通常のクマ被害とは性質が大きく異なっていました。特に次の3つは、他の事例と比べても際立った特徴です。
- 被害の大きさ(約4年で乳牛66頭の甚大な被害)
- 「食べるための狩り」ではない行動(食べ残し・目的不明)
- 驚くほど高い警戒心と速い逃げ足(徹底した逃走・回避能力)
クマ被害の件数と推移
最近、クマ被害が山奥だけの話ではなくなってきています。2025年現在、クマによる出没件数は8月末時点で1万6000件を超え、人身被害や死亡事故も過去最多クラスとなっています。さらに、クマの生息域は着実に私たちの生活圏に迫ってきており、国も「クマ被害対策パッケージ」を打ち出して本格的な対策に乗り出しました。
参考:クマ被害対策等について
冬眠前の秋に注意するべきクマ被害
クマの出没が増える中でも、特に注意が必要なのが冬眠前の秋です。秋のクマは冬に備えて大量のエネルギーを蓄えようとするため、普段より広い範囲を動き回り、人里にも近づきやすくなります。
- 行動量が最大になる
- 食べ物不足で人里に来やすい
- 警戒心がぶれやすい
という条件が重なる冬眠前の秋は、クマ被害のピークになりやすい季節です。
東京でも拡大するクマ被害
日本は、首都のすぐそばにクマが生息するという点で、世界でも非常に珍しい国です。東京都でも多摩地域を中心にクマの存在が確認されており、人口の多い都市部に近い環境で野生動物が暮らしているという現実があります。
近年は全国的にクマの出没が増えており、その影響は山間部だけでなく、都市近郊にも広がっています。
日本だけでなく海外でも広がるクマ被害
国外におけるクマ被害の現状
クマによる人身被害や人里近くへの出没は、日本だけの問題ではなく、世界各地で報告が増えています。これは、クマの個体数の回復や生息域の変化、人間の土地利用の拡大など、複数の要因が絡み合った現象です。
世界のクマ被害をまとめた論文も発表されています。2000〜2015年の期間に報告された、世界中のヒグマ(ブラウンベア)による「人への襲撃事件」の数は 664件でした。また、そのおよそ半数近くが子連れの母グマとの遭遇による攻撃でした。
参考:Brown bear attacks on humans: a worldwide perspective | Scientific Reports
アーバンベア(都市型クマ)の原因
ここでは都市部にクマが現れる主な原因を4つの観点に分けてまとめます。
地球温暖化による里山でのえさ不足
地球温暖化の影響で、ドングリやクリなどクマの主要な餌となる木の実が不作になる年が増えていると指摘されています。気温の上昇は開花や結実のタイミングにも大きく影響し、豊作と不作の差が極端になる年が続いています。これにより、山の中で十分なエサを確保できないクマが、やむを得ず人里や都市近郊まで降りてしまうケースが増えています。
生息環境の変化
里山の管理が行き届かなくなり、放置された森林や耕作放棄地が増えたことも、クマが都市近くに現れる理由のひとつです。手入れが行われない森は藪が増えて見通しが悪くなり、クマが人目を避けながら移動しやすい環境になります。また、放置された果樹や野菜畑がそのまま残っているエリアは、クマにとって魅力的な餌場です。
管理が不十分なゴミ
都市部や農村部で管理されていないゴミや収穫されない果樹が残っている場合、クマが簡単に得られる食べ物として学習してしまうことがあります。
特にここで紹介するものは、実際に各自治体や研究機関が注意喚起しているほど危険なものです。
- 生ごみ(特に肉・魚の残り、料理くず、果物の皮など)
-
- 外に置きっぱなしのゴミ袋
- バーベキュー後の残り物や油汚れの道具
- 収穫し忘れた果樹(柿、りんご、梅、栗など)
- 放置された野菜(とうもろこし、かぼちゃ、スイカなど)
- 無施錠で開きっぱなしの農作業小屋(餌や農産物の匂い)
個体数の増加
日本では、長期間にわたりクマの保護や狩猟規制が行われてきたこともあり、ツキノワグマやヒグマの個体数は多くの地域で増加傾向にあります。過去には絶滅が危惧された時期もありましたが、保全策や捕獲制限が功を奏し、生息数が回復した地域も見られます。
個体数が増えれば、生息域が広がり、人里近くや都市周辺にまで若いクマが進出するケースが増えやすくなります。つまり、クマの出没増加には、保護が成功した結果という側面も含まれています。
アーバンベア(都市型クマ)の対策
生ごみや餌の管理を徹底する
都市部で最も重要な対策は、クマを誘引する「匂いのあるもの」を徹底的に減らすことです。生ごみを前日から外に置かない、集積所の蓋を必ず閉める、ペットフードを屋外に置かないなど、日常の小さな習慣が出没リスクを大きく下げます。
クマは嗅覚が非常に鋭く、一度食べ物がある場所を覚えると何度でも訪れるため、私たち人間が日頃から注意して行動することが欠かせません。
住宅や農地周辺を管理する
庭先の果樹や耕作放棄地、藪の増えた空き地などは、クマが身を隠しながら移動しやすい場所になります。住宅周辺の草刈りや放置果樹の撤去、農地の管理強化などは、クマにとっての「居心地の良い通り道」を減らすことにつながります。
音で人の存在を知らせる
クマは基本的に臆病な動物で、人間の存在に気づけば避けることが多いとされています。都市近郊の散歩道や緑地帯では、鈴を鳴らす、会話しながら歩く、ラジオを流すなど「人がいるよ」という合図が効果的です。
特に早朝・夕方・夜間はクマの活動が増えるため、音による自己アピールは遭遇を避けるための簡単かつ有効な対策として推奨されています。
電気柵の設置拡大
近年、クマの出没対策として効果が最も高いとされているのが「電気柵」です。農地・果樹園・住宅地周辺の電気柵は、適切に設置され維持されていれば、クマ侵入をほぼ100%防げると報告されています。
特に都市近郊で効果を上げているケースが多く、自治体による補助金制度の拡大や共同設置が全国で広がっています。
捕獲と駆除
出没が繰り返され、人身事故の恐れが高い場合には、最終手段として捕獲や駆除が行われます。この役割を担うのが、狩猟免許を持つハンターです。
ただし日本ではハンターの数は長期的に減少しており、高齢化率約70%以上とされ、都市近郊や住宅地での捕獲には高い技術が求められるため、担い手不足が大きな課題になっています。
近年は、捕獲したクマの命を無駄にせず資源として活用する動きも広がっています。ここでは、その代表的な活用例をいくつか紹介します。
- クマ肉(ヒグマ・ツキノワグマ)がジビエとして注目される
クセが少なく脂の甘みがあることから新しいジビエとして、シカ・イノシシに次ぐ注目度
- 北海道ではヒグマ肉を使った加工品や飲食店での提供が拡大
ハンバーグ、ソーセージ、カレーなど商品化が進み、観光客向けメニューとして提供される
- 熊本県ではツキノワグマを使った伝統食「熊鍋」が今も継承されている
古くから山の恵みとして親しまれ、近年は地域文化を伝える料理として再評価
- 国が進めるジビエ利活用モデル事業でもクマ肉を対象に
地域での利活用体制づくりや衛生処理施設の整備が進み、資源としての活用が後押しされている
もしもアーバンベアに遭遇してしまったら
都市近くでもクマの目撃が増えている今、「なぜクマは人を襲うのか」を理解し、そのうえでどう行動すべきかを知っておくことが大切です。
「どうして人を襲うのか」を理解する
まず、クマが人を攻撃する理由は人を獲物として襲うためではありません。多くのケースは「防衛」や「驚き」が原因だとされています。ここではその原因となりうる理由とその対策をまとめます。
- 不意に近づかれたから
不意打ちを避けるためには「音で存在を知らせる」ことが重要です。鈴・会話・ラジオなど周囲に音が広がるものが効果的です。
- 子グマを守ろうとしているから
小さい個体だけを見つけても絶対に近づかないでください。見えないところに母グマが隠れている可能性があります。
- 餌場を荒らされていると思ったから
食べ物の匂いが残っていると危険です。アウトドアを楽しむときは、荷物は閉める・食べ物は片づけるを心がけましょう。
- 人の匂いに慣れ、警戒心が弱まっているから
人の生活圏に慣れた個体は人を怖がらなくなります。日常的なゴミ管理など、毎日の生活圏でのリスクを減らす行動がクマとの距離を保つカギになります。
- 負傷や空腹で追い詰められた状態だから
負傷状態・空腹状態のクマは逃げる力がなく、攻撃行動に出る場合もあります。見かけたら絶対に近づかず、速やかにその場を離れることが基本です。
命を守る行動を
遭遇してしまったら最優先すべきは「距離を取って逃げ切る」こと。国内外の遭遇事例を踏まえると、次のような行動が推奨されています。
- クマを直視し続けながら、ゆっくり後ずさる
- 物陰に隠れる・建物や車に避難する
- 襲われそうな時は荷物を置いて注意をそちらに向けさせる
万が一攻撃を受けた際は、次の行動が推奨されています。
- 体を丸めて頭と首を守る(致命傷を避けるため)
- 腕で顔面を守り、急所を覆う
- 安全な場所に逃げられたらすぐに救急要請を行う
緊急時の連絡先についても簡単に把握しておくことで大事を避けられることがあります。
- 119番(救急・ケガをした場合)
- 110番(警察・危険なクマの出没を見た場合)
- 自治体の鳥獣害担当課(各自治体・出没情報の共有や現場確認の実施)
まとめ
都市部にクマが現れるという状況は、私たちの生活環境そのものが大きく変化していることを映し出しています。温暖化や土地利用の変化、そして人間側の管理不足が折り重なる中で、クマと人が境界を共有する時代が本格的に始まりました。
大切なのは、恐れるだけでなく、正しい知識と行動で距離を保つことです。自然と共に暮らすための新しい視点が、これからの私たちに求められています。
update: 2025.12.13




