
ESGの基本を簡単に解説!SDGsやCSRとの違い、企業が取り組むメリットとは?
update: 2025.3.9
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ESGの基本を簡単に解説!SDGsやCSRとの違い、企業が取り組むメリットとは?
近年、企業経営に関して「ESG」が重要視されています。環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3つの視点を重視する経営手法であり、投資家や消費者からの評価を高めることにもつながります。
この記事では、ESGの基本から企業が取り組むべき理由、具体的なメリット、成功事例、最新の動きまで詳しく解説します。
ESGとは何か?
ESGの定義と概要
ESGとは、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(ガバナンス)」の頭文字を取った言葉で、企業の持続可能性や社会的責任を評価する基準として広く活用されています。
近年、投資家や企業経営に関してはESGの観点が重視されており、持続可能な成長を目指す企業にとっては無視できない要素となっています。
環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の各要素について
ESGで企業の持続可能性を評価する3つの要素 「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)」 は、具体的には次のように定義づけられています。
1. 環境(Environment)
企業の事業活動が環境に与える影響を考慮する要素です。気候変動や資源の枯渇といった問題への対応が求められています
- 温室効果ガス(GHG)の排出削減
- 再生可能エネルギーの導入
- 廃棄物削減とリサイクルの推進
- 水資源の管理
2. 社会(Social)
企業が従業員、顧客、取引先、地域社会とどのように関わるかを評価する要素です。労働環境の改善や多様性の尊重が重要視されます。
- ダイバーシティ&インクルージョン(多様性の尊重)
- 従業員の労働環境や安全管理
- 人権尊重とサプライチェーンの倫理的管理
- 顧客や地域社会への貢献
3. ガバナンス(Governance)
企業の経営の透明性や健全性を確保するための要素です。不正防止や適切な意思決定プロセスの確立が求められます。
- 取締役会の独立性と多様性
- 不正会計や汚職防止の仕組み
- 株主の権利保護
- 情報開示の透明性
この3つの要素をバランスよく考慮することが、ESG経営の実現につながります。次に、ESGがどのように誕生し、普及してきたのかを見ていきましょう。
ESGの歴史と背景

ESG概念の起源
ESGという概念が生まれた背景には、環境問題や人権問題、企業の不祥事などが社会に与える影響が大きくなり、従来の財務指標だけでは企業の持続可能性を十分に評価できないという認識が広がったことがあります。
ESGの概念は、2004年に国連が発表した報告書「Who Cares Wins」で初めて明確に定義されました。この報告書では、企業が環境・社会・ガバナンスの観点を取り入れることが、長期的な成長とリスク管理にとって不可欠であると提言されています。
さらに、2006年には国連が「責任投資原則(PRI: Principles for Responsible Investment)」を提唱し、機関投資家が投資判断にESGの要素を組み込むことを推奨しました。これにより、ESGは投資の世界で広がりを見せるようになり、企業経営においても無視できない要素となりました。
このように、ESGは単なる企業の社会的責任(CSR)を超え、投資や経営戦略に組み込まれるべき重要な指標として確立されていきました。
国連の責任投資原則(PRI)とは
責任投資原則(PRI: Principles for Responsible Investment) は、2006年に国連が提唱した投資原則であり、投資判断において ESG(環境・社会・ガバナンス)の要素を考慮することを推奨するものです。
PRIでは、署名機関が以下の6つの原則を順守することが求められます。
- 投資分析や意思決定プロセスにESGの視点を組み込む
- 積極的な議決権行使やエンゲージメントを通じてESGを実践する
- 投資対象となる企業や事業体に対し、ESG情報の適切な開示を求める
- ESGの実践を促進するため、投資業界全体で協力する
- PRIの原則を実践する際の効果を測定し、報告する
- これらの原則を実行し、普及させるために協力する
PRIは、発足当初から機関投資家や年金基金を中心に支持を集め、現在では全世界で4,000以上の機関がPRIに署名しています。署名機関の総運用資産額は100兆ドルを超える とされ、ESG投資の世界的な基準となっています。
ESG経営とは?

ESG経営の定義
ESG経営とは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)を企業の意思決定や事業運営に組み込み、長期的な成長と持続可能性を追求する経営手法です。これは単なるCSR(企業の社会的責任)とは異なり、企業価値の向上やリスク管理の一環として戦略的に実施されるものです。
前述したように、ESGは企業活動の環境や社会への影響、経営の健全性を評価する基準として確立されており、ESG経営はこれを企業戦略に組み込むことを指します。特に、投資家の判断基準や消費者意識の変化に対応するため、企業にとって、ESG経営は単なる選択肢ではなく、規制や市場環境の変化に対応するための「不可欠な戦略」となっています。
ESG経営と従来の経営との違い
従来の経営は財務指標(売上・利益・株主価値)を重視していましたが、ESG経営は環境・社会・ガバナンスの視点を加え、長期的な持続可能性を重視する点が大きく異なります。
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ESG経営は、短期的な収益だけでなく、企業の社会的責任や環境対応を経営の重要な要素とする考え方です。
ESG経営は、短期的な収益だけでなく、企業の社会的責任や環境対応を経営の重要な要素として組み込むことで、持続可能な成長と企業価値の向上を実現することを目指しています。
ESG経営に取り組むメリット
ESGと関連する概念との違い

ESGとSDGs(持続可能な開発目標)の違い
ESGとSDGsはどちらも持続可能な社会の実現を目指す概念ですが、目的や対象、アプローチが異なります。
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ESG経営は、短期的な収益だけでなく、企業の社会的責任や環境対応を経営の重要な要素とする考え方です。
簡単にまとめると、ESGは企業の経営・投資に焦点を当てた枠組みであり、SDGsは国際社会全体の目標として幅広い領域をカバーしています。ESG経営は、SDGsの目標達成にも貢献する手段の一つと考えられます。
ESGとCSR(企業の社会的責任)の違い
CSRは、企業が自主的に社会貢献活動を行う取り組みであり、環境保護や地域社会への支援など、直接の利益を目的としない活動が中心です。一方で、ESGは企業価値の向上を目的とし、環境・社会・ガバナンスの視点を経営戦略に統合するものです。
また、CSRは企業の善意による活動として位置付けられますが、ESGは投資家や市場の評価基準にもなり、企業経営の中核として組み込まれる点が大きな違いです。そのため、CSRは企業ごとに自由な取り組みが可能ですが、ESGは持続可能な成長のための指標として、より具体的な経営戦略や情報開示が求められます。
ESG投資とは?
ESG投資の概要
ESG投資とは、企業の財務指標だけでなく、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の要素を考慮して行われる投資のことを指します。従来の投資は利益や成長性を重視していましたが、ESG投資では企業の持続可能性や社会的責任も評価の対象となります。
この考え方が広まった背景には、気候変動や人権問題などの社会的課題が深刻化し、企業が長期的に成長するためにはESGへの対応が不可欠になったことがあります。また、ESGに積極的に取り組む企業はリスク管理が適切であり、長期的に安定した成長が期待できると判断されるため、投資家にとっても魅力的な投資対象となっています。
現在、多くの金融機関や年金基金がESG投資を推進しており、世界的な投資トレンドとして拡大しています。特に、規制強化や市場の変化により、ESG要素を無視した投資はリスクが高いと考えられるようになっています。そのため、企業にとってもESGに取り組むことは、資金調達や企業価値の向上に直結する重要な戦略となっています。
ESG投資の種類と手法
ESG投資には、投資家が企業の環境・社会・ガバナンス(ESG)要素をどのように考慮するかによって、いくつかの手法が存在します。代表的な手法を紹介します。
1. ネガティブ・スクリーニング(除外投資)
倫理的・社会的に問題があると判断される企業や業種(例:武器・タバコ・ギャンブル・化石燃料産業など)を投資対象から除外する方法。
2. ポジティブ・スクリーニング(選好投資)
ESGの取り組みが優れている企業を積極的に選んで投資する方法。業界内で最も優れたESG対応を行っている企業(ベスト・イン・クラス)に投資することが多い。
3. インパクト投資
社会的課題の解決を目的とし、環境保護、教育、貧困対策などに貢献する企業やプロジェクトに投資する方法。金融リターンだけでなく社会的リターンも重視する。
4. エンゲージメント投資(アクティブ・オーナーシップ)
投資家が株主として企業と対話し、ESGへの取り組みを強化するよう働きかける方法。株主総会での議決権行使や、経営陣との協議を通じてESG課題の改善を促す。
5. サステナビリティ・テーマ投資
気候変動、再生可能エネルギー、サーキュラーエコノミー(循環型経済)など、特定のサステナビリティ関連テーマに焦点を当てた投資。
6. ESG統合
財務分析とESG要素を統合し、投資判断の際にESGリスクや機会を考慮する方法。多くの機関投資家が採用しており、最も広く普及している手法の一つ。
ESG投資は、単なる社会貢献ではなく、企業の持続可能性やリスク管理を評価する手法として確立されており、投資家の間で重要性が高まっています。企業側も資金調達や評価向上のために、ESGへの取り組みを強化する流れが進んでいます。
企業におけるESGの重要性とESG経営に取り組むメリット

企業がESGに取り組むことは、単なる社会貢献ではなく、企業価値の向上や持続可能な成長に直結します。近年、投資家・消費者・規制当局がESGを重視するようになり、対応の有無が企業の評価に大きな影響を与えています。
特に、ESGへの取り組みが企業価値に与える影響として、以下の点が挙げられます。
- 投資家からの評価向上
ESGを考慮した投資が主流になりつつあり、ESG対応が不十分な企業は投資対象から外される可能性が高まっています。特に、大手機関投資家はESGリスクを考慮したポートフォリオを構築しており、対応が進んでいる企業ほど資金調達がしやすくなります。 - 消費者の購買行動への影響
環境や社会問題に配慮した企業の商品・サービスは、消費者の選択基準の一つになっています。特にZ世代を中心に、企業のESGへの姿勢を重視する傾向が強く、ブランド価値の向上につながります。 - 規制強化への対応
各国でESG関連の規制が強化されており、適切な対応をしない企業はコンプライアンスリスクを抱えることになります。例えば、EUではサステナビリティ関連の情報開示義務(CSRD)が導入され、ESG情報の透明性が求められています。 - 長期的な事業リスクの低減
気候変動対応の遅れや労働環境の問題は、企業にとって大きなリスク要因となります。ESG経営を取り入れることで、将来的な訴訟リスクの回避や、安定したサプライチェーンの確保が可能になります。 - 優秀な人材の確保と従業員エンゲージメントの向上
企業の社会的責任を重視する求職者が増えており、ESGに積極的な企業は優秀な人材の確保につながります。また、従業員の働きがいが向上し、生産性の向上にも寄与します。
ESGへの対応は、企業の競争力を高め、持続可能な成長を支える重要な要素となっています。企業価値を高めるためには、単なる表面的な取り組みではなく、経営戦略の中核としてESGを組み込むことが求められます。
ESGの具体的な取り組み事例

企業がESG(環境・社会・ガバナンス)に取り組む際の具体的な事例を、各要素ごとに以下に紹介します。
1. 環境(Environment)への取り組み例:トヨタ自動車
トヨタ自動車は、「トヨタ環境チャレンジ2050」を掲げ、2050年までに新車のCO₂排出量を90%削減する目標を設定しています。
この目標達成のため、電動車のラインナップ拡充やプラグインハイブリッド車(PHEV)の開発など、環境負荷低減に向けた取り組みを積極的に推進しています。
2. 社会(Social)への取り組み例:ソニー
ソニーは、多様性と包括性の推進に力を入れており、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)を経営方針の一環として位置づけています。
具体的には、健全な職場環境の整備や多様な人材の採用・育成・登用を推進し、グループ全体でダイバーシティを推進しています。
3. ガバナンス(Governance)への取り組み例:ソニーグループ株式会社
ソニーグループ株式会社は、コーポレートガバナンスの強化を目的に、取締役会の監督機能と業務執行の分離を推進しています。
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これにより、透明性と公正性の高い経営体制を構築し、持続可能な成長を目指しています。
これらの事例は、各企業がESGの各要素に対して具体的かつ積極的に取り組んでいることを示しています。企業の持続可能な成長と社会的責任の遂行のためには、ESGへの取り組みが不可欠であることがわかります。
ESG情報の開示と報告

ESG情報の開示基準とガイドライン
企業がESG(環境・社会・ガバナンス)情報を開示する際には、国際的および国内の基準に沿うことが求められています。透明性のある情報開示は、投資家やステークホルダーの信頼獲得につながります。
1. 国際的な主な開示基準
- GRIスタンダード:環境・社会・経済の幅広い情報開示を推奨
- TCFD提言:気候関連リスクの財務影響を開示
- SASBスタンダード:業種別の重要なESG指標を整理
- IFRSサステナビリティ開示基準:財務情報とESG情報を統合
2. 日本国内の動向
3. 企業の実践例
- 商船三井は「ESG情報開示ガイドラインとの対照表」を作成し、開示の透明性を向上 (mol.co.jp)
企業はこれらの基準を活用し、適切なESG情報開示を行うことで、投資家からの評価向上やリスク管理の強化につなげることができます。
ESG報告書の作成方法
ESG(環境・社会・ガバナンス)報告書は、企業が持続可能性に関する取り組みをステークホルダーに伝える重要なツールです。以下に、ESG報告書の作成手順を簡潔にまとめました。
- 目的と対象読者の明確化
報告書の作成目的(例:ESG情報の透明性向上、ステークホルダーとの信頼構築)と、主な読者(投資家、顧客、従業員など)を明確にします。 - 全体スケジュールの策定
報告書の制作には通常半年程度かかるため、余裕を持ったスケジュールを立て、中間目標を設定します。 - ガイドラインの参照
GRIスタンダードや環境省の「環境報告ガイドライン(2018年版)」など、適切なガイドラインを参照し、報告内容の枠組みを決定します。
env.go.jp - 情報収集とデータ分析
社内外から必要なデータを収集し、環境負荷、社会貢献、ガバナンス体制などの現状を分析します。 - 内容の構成と執筆
収集した情報をもとに、環境、社会、ガバナンスの各項目について具体的な取り組みや成果を記載します。 - デザインと編集
読みやすさや視覚的な訴求力を高めるため、図表や写真を効果的に使用し、レイアウトを工夫します。 - レビューとフィードバック
関係者からの意見を収集し、内容の精査と修正を行います。 - 公開と普及
完成した報告書をウェブサイトや印刷物として公開し、広くステークホルダーに周知します。
これらの手順を踏むことで、効果的なESG報告書を作成し、企業の持続可能性への取り組みを適切に伝えることができます。
ESGに関する最新の動向と今後の展望
1. 規制強化と情報開示の標準化
各国でESG情報開示の義務化が進み、EUの「企業サステナビリティ報告指令(CSRD)」やIFRSの新基準など、国際的な統一ルールが整備されつつある。
2. ESG投資の拡大と主流化
2025年までに世界のESG資産は53兆ドル超になる見込み(ブルームバーグ調査)。投資家が長期的な成長を重視し、ESG要素を評価基準としている。
3. 企業価値への影響とリスク管理
ESGへの取り組みが中長期的な企業価値向上につながる一方で、情報の透明性や信頼性が問われる。適切なリスク管理と開示が必要。
4. 地域ごとの違い
欧州では生物多様性やESG規制が強化される一方、米国では政治的影響により投資家の動向が分かれる傾向がある。
5. ESGの再評価と新たなアプローチ
ESGの枠組みに対する批判もあり、企業は競争優位性として持続可能な経営を実践する「競争的持続可能性」への移行が求められている。
今後、企業は規制対応だけでなく、ESGを成長戦略として捉え、透明性のある情報開示と具体的な取り組みを強化することが重要になる。
ESGとは?まとめ
ESG(環境・社会・ガバナンス)は、企業の持続可能性や社会的責任を評価する重要な指標として、経営や投資の分野で注目を集めています。ESG経営に取り組むことで、投資家の評価向上、ブランド価値の向上、リスク管理の強化など多くのメリットが得られます。また、ESG投資の拡大に伴い、情報開示の透明性が求められ、各国で規制強化が進んでいます。
特に、EUの「企業サステナビリティ報告指令(CSRD)」などの施行により、企業はGRIやTCFDなどの基準に基づいたESG情報の開示が必要になっています。今後、ESGへの対応は「企業価値の向上」と「規制対応」の両面で不可欠となるでしょう。
ESGは一時的な流行ではなく、企業の成長戦略として組み込むべき要素です。持続可能な社会の実現に向け、ESG経営を推進し、長期的な競争力を高めることが求められています。
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