
SDGsの目標16「平和と公正をすべての人に」
update: 2025.3.9
Contents
SDGsの目標16「平和と公正をすべての人に」
世界の現状と日本の取り組み事例、私たちにできること
SDGs(持続可能な開発目標)は、2015年に国連で採択された貧困の撲滅や環境保護など2030年までの達成を目指す17の目標と169のターゲットからなる国際目標です。
本記事では目標16「平和と公正をすべての人に」における現状や課題、目指す社会取り組みについて、そして平和で公正な世界の実現に向けて私たちができることを解説します。
SDGsの目標16「平和と公正をすべての人に」とは
目標16「平和と公正をすべての人に」は、暴力や汚職が広がる現状を踏まえ、平和で包摂的な社会を実現し、すべての人が司法へのアクセスを得られるようにし、説明責任のある公正な制度を構築することを目指しており、これを実現するためには法、教育、制度など多角的な視点からの取り組みが必要とされています。
SDGs16「平和と公正をすべての人に」のターゲット

SDGs16「平和と公正をすべての人に」では目標を達成するために、以下の具体的な12個のターゲットに分けられます。
16.1 | あらゆる場所において、すべての形態の暴力及び暴力に関連する死亡率を大幅に減少させる。 |
16.2 | 子どもに対する虐待、搾取、取引及びあらゆる形態の暴力及び拷問を撲滅する。 |
16.3 | 国家及び国際的なレベルでの法の支配を促進し、すべての人々に司法への平等なアクセスを提供する。 |
16.4 | 2030年までに、違法な資金及び武器の取引を大幅に減少させ、奪われた財産の回復及び返還を強化し、あらゆる形態の組織犯罪を根絶する。 |
16.5 | あらゆる形態の汚職や贈賄を大幅に減少させる。 |
16.6 | あらゆるレベルにおいて、有効で説明責任のある透明性の高い公共機関を発展させる |
16.7 | あらゆるレベルにおいて、対応的、包摂的、参加型及び代表的な意思決定を確保する。 |
16.8 | グローバル・ガバナンス機関への開発途上国の参加を拡大・強化する。 |
16.9 | 2030年までに、すべての人々に出生登録を含む法的な身分証明を提供する。 |
16.10 | 国内法規及び国際協定に従い、情報への公共アクセスを確保し、基本的自由を保障する |
16.a | 特に開発途上国において、暴力の防止とテロリズム・犯罪の撲滅に関するあらゆるレベルでの能力構築のため、国際協力などを通じて関連国家機関を強化する。 |
16.b | 持続可能な開発のための非差別的な法規及び政策を推進し、実施する。 |
このようにSDGsの目標16では、10個の達成目標(数字で書かれたもの)と2個の実現方法(アルファベットで書かれたもの)からなる12個のターゲットに分かれて正しい政治が行われるように努めています。
SDGsの目標16「平和と公正をすべての人に」においての現状と課題
戦争や衝突、暴力行為

世界の殺人被害の状況をみると、10万人あたりの平均犠牲者数は4.7人ですが、途上国では先進国の2倍以上と大きな差があります。
特に中南米では10万人あたり22.5人と突出して高い水準となっています。
一方、紛争による死者数は、2012年に10万人あたり6人だったのに対し、2014年には5人へと若干減少しました。
しかし、この数値も先進国と途上国で大きな格差があり、途上国での死亡率は先進国の2倍となっています。
特に2011年以降、シリアでは紛争による死者数が急増し、2014年には約6万人ものシリア人が命を落とすなど、紛争が深刻な影響を及ぼしています。
(出典:国際開発センター公式サイト)
不正行為や賄賂の授受

各国の公的機関や政治の腐敗の程度を示す「腐敗認識指数」というものがあります。スコアは0~100点で評価され、0が最も腐敗している状態、100が最もクリーンな状態を示します。2014年度の地球規模の腐敗インデックスの平均スコアは100点満点中43点と低く、世界の69%の国々が50点未満という結果でした。これは、多くの国で政治や行政の透明性が十分でないことを示しています。
さらに、世界銀行の調査(2015年)によると、低所得国の企業の25%が過去1年間に贈賄を行ったと報告されており、この割合は上位中所得国で13%、高所得国では4%と、所得が低い国ほど贈賄が多い傾向が見られます。
また、税務署職員への賄賂についても、低所得国では20%の企業、上位中所得国では10%、高所得国では2%が贈賄の経験を報告しました。
特に途上国では、事業ライセンスの取得、納税、建設許可の取得、インフラ整備(電気・水道工事)など、さまざまな場面で賄賂を求められるケースが多く、こうした腐敗の蔓延はビジネスの持続可能な成長に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
(出典:国際開発センター公式サイト)
低水準な出生登録率や公的な認証

出生登録の提出は、個人の権利の保障や司法へのアクセス、さらに社会サービスを受けるための重要な条件となります。
しかし、世界では依然として課題が残っており、5歳までに出生登録が行われない子どもが全体の4分の1に上ります。
特に、サブサハラアフリカ地域では出生登録率がわずか54%と低い水準にとどまっています。
(出典:国際開発センター公式サイト)
児童虐待や搾取、不当な扱い

世界の人身売買の犠牲者の約30%が子どもであり、その多くが女子ですが、それ以外にもさまざまな形態の虐待や搾取が行われています。
人身売買の被害者は、性的搾取、強制結婚、家庭内での強制労働など、過酷な状況に置かれています。
また、中低所得国の31カ国を対象とした調査によると、18~29歳の女性のうち16%が18歳になる前に初めて性的暴力を経験していることが分かっています。
さらに、こうした問題を正確に把握するためのデータ不足も大きな課題となっています。
(出典:国際開発センター公式サイト)
被拘禁者の処遇や対応

世界の拘禁者の約30%が裁判を受けることなく拘禁されており、この状況は過去10年間ほとんど改善されていません。
特に南アジアでは、拘禁者の3人に2人が裁判を受けずに収監されており、最も高い割合となっています。
続いて中南米では43%と依然として高く、こちらも過去10年間ほとんど変化が見られていません。
(出典:国際開発センター公式サイト)
SDGsの目標16「平和と公正をすべての人に」においての取り組みと自分たちができること
紛争地域の子どもたちを取り巻く現状と私たちにできる支援
現在、世界中の紛争地域では多くの子どもたちが命や健康の危機にさらされており、教育を受ける機会を奪われたり、平等に経済活動へ参加できない状況が続いています。この深刻な現実を理解し、支援の輪を広げることが重要です。
こうした問題を解決するために、世界中でさまざまな支援活動が展開されており、日本国内でも多くの団体が難民支援や子どもの貧困問題に取り組んでいます。
支援活動に直接参加するのはもちろん、寄付を通じて協力することも一つの方法です。世界では、食糧・栄養不足に苦しむ子どもや難民キャンプで生活する人々を支援する団体などが、人権を守り、命と健康を救うための活動を続けています。
政治への関心を高め、より良い社会を目指す
世界の情勢を変えるためには、積極的に政治に関心を持ち、選挙などを通じて民意を反映させることが重要です。
私たち一人ひとりの行動が、より良い社会の実現につながります。
とはいえ、個人の力だけで世界の問題を解決するのは難しいもの。そこでおすすめなのが、SDGsに関連する分野で活動する団体に寄付をすることです。
支援団体を通じて世界のさまざまな課題に貢献することで、間接的にでもより良い未来をつくる手助けができます。
現状に対しての発信

世界の現状を学び、その実態を多くの人に伝えて理解を広めることで、個人の力だけでなく、より大きな支援の輪を生み出すことができます。
まずは自分自身が問題について深く理解し、SNSや身近な人に情報を発信することで、関心を持つ人を増やし、より多くの支援につなげることが大切です。
まとめ
SDGs目標16は、暴力や汚職をなくし、すべての人が公平に司法へアクセスできる平和で包摂的な社会の実現を目指しています。
しかし現状では、紛争や暴力により多くの命が奪われ、途上国では先進国の2倍以上の死亡率が記録されるなど、平和の実現は遠い状況です。
また、汚職や贈賄の蔓延により社会の公正性が損なわれ、出生登録の欠如により多くの人が教育や社会サービスを受けられない問題も深刻です。
さらに、人身売買の犠牲者の30%が子どもであり、性的搾取や強制労働が横行しています。
世界の拘留者の30%が裁判を受けることなく拘留されるなど、法の公正性の確保も大きな課題です。
この問題に対し、私たちができることは、支援活動への参加や寄付、政治への関心を高めること、世界の現状を発信することです。
個人の小さな行動が、より多くの支援の輪を生み出し、平和で公正な社会の実現につながります。今できることから始めてみませんか?
update: 2025.3.9